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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-05-04

中原中也 「帰郷」


「山羊の歌」より



歸郷


柱も庭も乾いてゐる
今日は好い天気だ
椽の下では蜘蛛くもの巣が
心細さうに揺れてゐる

山では枯木も息を吐く
あゝ今日は好い天気だ
ばたの草影が
あどけないかなしみをする

これが私の故里ふるさと
さやかに風も吹いてゐる
心置なく泣かれよと
年増婦としまの低い聲もする

あゝ おまへはなにをして來たのだと……
吹き來る風が私に云ふ


中原中也 1934 「山羊の歌」



出典:中原中也全詩集 P.32 1972 角川書店

注) 一部ルビ加筆

改訂:20180601 レイアウト更新


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