この詩に触発されたロシアのバレリーナ アンナ・パヴロワ の依頼で、振付師 ミケル・フォーキンが、曲にサン=サーンスの「白鳥」を選び、詩の内容を振り付け、バレー「去り逝く白鳥」を完成させたといわれる。
去り逝く白鳥
I. & II. スタンザ 訳詩省略
( I. 荒涼たる荒れ地。川に浮いて、死期の近いことを察した白鳥が、高く、悲しみの声をあげる)
(II. その周囲のカオスのような状況の描写)
(II. その周囲のカオスのような状況の描写)
III.
野生の白鳥の 死の賛美歌は
荒廃したこの地の 魂に 歓喜をもたらした
悲しみにかくれ: 初めは 耳に
低いさえずりで、やがて、大きくはっきりと;
そして大空の下を 漂い、
衰弱を凌ぎ、挽歌は ひそやかに流れる
時に遠く、また 時に近く;
しかし程なく 白鳥の とてつもない喜びの声が、
風変わりで多様な 音楽と共に、
自由で力強い 喜びの賛美歌となって 流れ行く;
力ある人たちが 歓喜する時のように
ショームや、シンバルや、黄金の竪琴と共に、
そして彼らの歓呼の騒ぎは なおも続いて
開いている街の門を通り抜け 更に遠く、
夕星を見守る 羊飼いのところまで。
そして 忍び寄る苔 よじ登る蔦、
そして ジメジメとして カビ臭い柳の枝、
そして 波のように高まる 葦のざわめき、
そして エコーバンクに 波打つ角笛、
そして 荒涼とした 入江や池の周りに
群がる 銀色の 沼地の花々、
それらは皆 渦巻く歌で 溢れかえっている。
荒廃したこの地の 魂に 歓喜をもたらした
悲しみにかくれ: 初めは 耳に
低いさえずりで、やがて、大きくはっきりと;
そして大空の下を 漂い、
衰弱を凌ぎ、挽歌は ひそやかに流れる
時に遠く、また 時に近く;
しかし程なく 白鳥の とてつもない喜びの声が、
風変わりで多様な 音楽と共に、
自由で力強い 喜びの賛美歌となって 流れ行く;
力ある人たちが 歓喜する時のように
ショームや、シンバルや、黄金の竪琴と共に、
そして彼らの歓呼の騒ぎは なおも続いて
開いている街の門を通り抜け 更に遠く、
夕星を見守る 羊飼いのところまで。
そして 忍び寄る苔 よじ登る蔦、
そして ジメジメとして カビ臭い柳の枝、
そして 波のように高まる 葦のざわめき、
そして エコーバンクに 波打つ角笛、
そして 荒涼とした 入江や池の周りに
群がる 銀色の 沼地の花々、
それらは皆 渦巻く歌で 溢れかえっている。
アルフレッド・テニスン
Alfred Lord Tennyson 1830 “The Dying Swan”
アルフレッド・テニスン 1830 "去り逝く白鳥"
土のちり 訳
アルフレッド・テニスン 1830 "去り逝く白鳥"
土のちり 訳
注)この詩とバレー “スヴェトラーナ・ザハーロワ「去り逝く白鳥」” のタイトルは、いずれも "The Dying Swan"。そして その邦訳は "瀕死の白鳥" とされることが多い。しかし、"瀕死" という語の意は、死を間近にしてはいても死そのものを含まず、これを "Dying" の訳語とすると、この二つ作品の主題をスポイルしてしまう。
直訳すれば "死ぬ白鳥" となるところを、ここでは「神のみもとへまさに立ち去ろうとしている」といわれる意を込め "去り逝く白鳥" とした。
直訳すれば "死ぬ白鳥" となるところを、ここでは「神のみもとへまさに立ち去ろうとしている」といわれる意を込め "去り逝く白鳥" とした。
注)ショーム = ダブルリードの大小の笛 オーボエの前身
注)エコーバンク = 土手のような地形の近くで声や音がよく響く場所
注)白鳥のとてつもない喜びの声 = ↓
ソクラテス「白鳥は、死ななければならないと気づくと、それ以前にも歌ってはいたのだがその時には特に力いっぱい、また極めて美しく歌うのである。それというのも、この鳥は神[アポロン]の召使いなのだが、その神のみもとへまさに立ち去ろうとしていることを、喜ぶからなのである。」
(出典:プラトン BC427-BC347「パイドン」P.90 岩田晴夫訳 岩波書店)
ソクラテス「白鳥は、死ななければならないと気づくと、それ以前にも歌ってはいたのだがその時には特に力いっぱい、また極めて美しく歌うのである。それというのも、この鳥は神[アポロン]の召使いなのだが、その神のみもとへまさに立ち去ろうとしていることを、喜ぶからなのである。」
(出典:プラトン BC427-BC347「パイドン」P.90 岩田晴夫訳 岩波書店)
Link:「スヴェトラーナ・ザハーロワ「去り逝く白鳥」」
改訂:2017.07.02 彼方へ→遠く, 入江や池を→入江や池の周りに, 囲んで群がる→群がる
2018.05.25 レイアウト更新 リード追記
2018.06.13 行間隔増加, …を鳴らし→ …と共に
2018.10.19 エコーバンクの→エコーバンクに 他説明文一部表現変更
2021.08.08 注)白鳥のとてつもない喜びの声 ソクラテスの言葉の引用補足
2023.12.31 注)に題名の訳語の説明を加筆, 他
2024.05.15 リンク記載位置変更, レイアウト修正
2018.05.25 レイアウト更新 リード追記
2018.06.13 行間隔増加, …を鳴らし→ …と共に
2018.10.19 エコーバンクの→エコーバンクに 他説明文一部表現変更
2021.08.08 注)白鳥のとてつもない喜びの声 ソクラテスの言葉の引用補足
2023.12.31 注)に題名の訳語の説明を加筆, 他
2024.05.15 リンク記載位置変更, レイアウト修正
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The Dying Swan
III.
The wild swan's death-hymn took the soul
Of that waste place with joy
Hidden in sorrow: at first to the ear
The warble was low, and full and clear;
And floating about the under-sky,
Prevailing in weakness, the coronach stole
Sometimes afar, and sometimes anear;
But anon her awful jubilant voice,
With a music strange and manifold,
Flow'd forth on a carol free and bold;
As when a mighty people rejoice
With shawms, and with cymbals, and harps of gold,
And the tumult of their acclaim is roll'd
Thro' the open gates of the city afar,
To the shepherd who watcheth the evening star.
And the creeping mosses and clambering weeds,
And the willow-branches hoar and dank,
And the wavy swell of the soughing reeds,
And the wave-worn horns of the echoing bank,
And the silvery marish-flowers that throng
The desolate creeks and pools among,
Were flooded over with eddying song.
III.
The wild swan's death-hymn took the soul
Of that waste place with joy
Hidden in sorrow: at first to the ear
The warble was low, and full and clear;
And floating about the under-sky,
Prevailing in weakness, the coronach stole
Sometimes afar, and sometimes anear;
But anon her awful jubilant voice,
With a music strange and manifold,
Flow'd forth on a carol free and bold;
As when a mighty people rejoice
With shawms, and with cymbals, and harps of gold,
And the tumult of their acclaim is roll'd
Thro' the open gates of the city afar,
To the shepherd who watcheth the evening star.
And the creeping mosses and clambering weeds,
And the willow-branches hoar and dank,
And the wavy swell of the soughing reeds,
And the wave-worn horns of the echoing bank,
And the silvery marish-flowers that throng
The desolate creeks and pools among,
Were flooded over with eddying song.
Ref. https://en.wikisource.org/wiki/The_Dying_Swan
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