逝く夏
黄色い樹の葉がふるへる。
樹の葉が降つてゐる。
やさしいもの、なつかしいものが残らず
枯れて、沈む、墓の中へ。
森の梢の周りに、いたましげに
日沒の光がふるへてゐる。
これは、別れを告げてゆく夏の光の
最後のくちづけかも知れない。
心の底の底から
泣かずにはゐられない氣持ちがする。
今この有様がわたくしに
戀の別れを叉しても想ひ出させる。
お前と別れるさだめだつた。
まもなくお前の死ぬことが判つてゐた。
私は、去つてゆく夏であり、
お前は枯れてゆく森だつた。
樹の葉が降つてゐる。
やさしいもの、なつかしいものが残らず
枯れて、沈む、墓の中へ。
森の梢の周りに、いたましげに
日沒の光がふるへてゐる。
これは、別れを告げてゆく夏の光の
最後のくちづけかも知れない。
心の底の底から
泣かずにはゐられない氣持ちがする。
今この有様がわたくしに
戀の別れを叉しても想ひ出させる。
お前と別れるさだめだつた。
まもなくお前の死ぬことが判つてゐた。
私は、去つてゆく夏であり、
お前は枯れてゆく森だつた。
Heinrich Heine 1827 Der scheidende Sommer aus Neue Gedichte
ハインリッヒ・ハイネ「逝く夏」新詩集 より
片山敏彦 訳
ハインリッヒ・ハイネ「逝く夏」新詩集 より
片山敏彦 訳
出典:新譯 ハイネ詩集 片山敏彦 訳 1938 新潮社
改訂:2018.08.16 レイアウト更新 他出典記述加筆
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