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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-08-31

ハインリッヒ・ハイネ「逝く夏」


詩集「新詩集」より



逝く夏


黄色い樹の葉がふるへる。
樹の葉が降つてゐる。
やさしいもの、なつかしいものが残らず
枯れて、沈む、墓の中へ。

森の梢の周りに、いたましげに
日沒の光がふるへてゐる。
これは、別れを告げてゆく夏の光の
最後のくちづけかも知れない。

心の底の底から
泣かずにはゐられない氣持ちがする。
今この有様がわたくしに
戀の別れを叉しても想ひ出させる。

お前と別れるさだめだつた。
まもなくお前の死ぬことが判つてゐた。
私は、去つてゆく夏であり、
お前は枯れてゆく森だつた。




Heinrich Heine 1827 Der scheidende Sommer aus Neue Gedichte
ハインリッヒ・ハイネ「逝く夏」新詩集 より:片山敏彦 訳



出典:新譯 ハイネ詩集 片山敏彦 訳 1938 新潮社

改訂:2018.08.16 レイアウト更新 他出典記述加筆
2024.02.10 アイコン•リンク修正



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