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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-09-02

ヘレン・マガーさん「ベニスの謝肉祭」


独奏フルートの名曲、あるいは、フルート教則本でおなじみの「ベニスの謝肉祭」。
深い味わいのある名曲というわけではなく、フルート奏者の、テクニックの聴かせどころ、聴きどころ、そのためにあるような曲。



イタリアのベニス地方の民謡をもとに、3人のフルートの名人がそれぞれ変奏曲を作曲しています。
日本で有名なのは、そのうちのひとり、フランス人のポール-A・ジェナンによるもの。

演奏するのは、アメリカはユタ州の、19歳、セミプロのフルーティスト、ヘレン・マガーさん。
15歳のとき、カーネギーホールで毎年行われるコンテストのようなもののフルート部門で優勝。
以来、通学と演奏会を両立させてきたとのこと。
吹いてる楽器は、ミヤザワ の Boston Classic というプロ向けのもの。

この曲、アクロバチックなテクニックを披露する、名人御用達の定番。
なので、マルセル・モイーズも、J-ピエール・ランパルも、マクサンス・ラリューも、同じ曲を吹いています。
ジェームス・ゴールウェイは、イタリア人フルーティスト、ブリッチャルディ作曲のものを吹いています。

もちろん、それぞれ、さすがにプロの演奏で、実にうまい。

しかし、プロの演奏家の手慣れた演奏は、たとえていうと、サーカスで曲芸を見たときのように、素人には、真似はおろか想像もつかない、難しいテクニックに違いない、ずごいな、とは思っても、その道のプロがやっているのだからと、特別な感動はない。

でも、家庭で、その技を披露したら・・・ いやー、スリリングで、聴いているだけで体に力が入ってしまって、楽しい、すごい!

ヘレンさん、自宅の一室と思われる部屋で、自分で譜面をめくりながら、カメラとマイクの直前で演奏します。

オンマイクで残響も殆ど無いため、楽器の鳴る音もキーの動きも、きわめてリアルに捉えられています。
強いスタッカートの息遣いも、超速のトリルの音の粒立ちも、トリプルタンギングの舌の動きも。

2番目の変奏、最初に譜面をめくったあと、のグリッサンドが圧巻。
連続するグリッサンドが、早い! 滑らか!
そして、それだけでなく、早くて滑らかなのに、滑っていく音階の一つ一つの音が明瞭。

こういう俊敏な演奏の技術にかぎっては、10代の女性の技に、プロのおじさんたちはかなわないのかもしれません。
あるいは、名人の演奏を遠くで聴くより、目の前で聴く上手なアマチュアの演奏のほうが、より魅力的だということかもしれません。

たぶん、そうしたいろいろな要素があって、この演奏、大変魅力的です。


∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥


Brava !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

4'48"
Carnival of Venice
Comp: Paul-Agricole Génin
Fl: Helen McGarr
Pf: Jill Winters


誤記訂正: ジュナン→ジェナン
改訂: 末梢表現訂正加筆



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