Click Icon or Scroll up

Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-11-08

ニニ・ロッソ "トランペットのバラード"


(俗名:夕焼けのトランペット)

トランペットのNini Rosso 氏、1961年のヒット曲 "ballata della tromba (トランペットのバラード)"



十代の頃、無意味な飾りでしかない邦題と、歌詞がイタリア語であるせいで、ニニ・ロッソが歌っている内容はさっぱり判らなかったものの、もの悲しげな調子と、それを払拭するかのように舞い上がるトランペットの響きに惹かれました。当時、多くの人が同じようにこの曲に親しんでいたのだろうと想像します。

古くからトランペットは、祝典の華、突撃のラッパ、すなわち権力の道具として使われ、親しまれ、また疎まれてきました。
本場イギリスのブラスバンド(文字通り金管楽器によるバンド)は今日でも、トランペットをメンバーに加えず、コルネットがそれに代わります。それはまさに気骨ある文化といえると思います。

その、派手には鳴るが疎まれることもあるトランペットに、悲しみと追憶を託して高らかに歌いあげる、トランペットをセンチメンタルに鳴らし世界に響き渡らす、という他の者には思いもおよばぬ業を成し遂げたロッソ氏、類まれな天才と思います。

ニニ・ロッソ氏の音楽の魅力は、第一に、他者の追随を許さぬ卓越したトランペット演奏の味わい深さ、そして、この歌の歌唱や他の曲のナレーションなどに、乾いたというかさらっとした感じ、あるいは突き放すような、ぶっきらぼうのような、あっさりとした感じとでもいうか、情緒に溺れない、センチメンタルになり過ぎない感じがあって、それが、かなりセンチメンタルに過ぎる嫌いのある歌詞やセリフを、魅力あるものとして響かせているところにあるように思います。

しかし、ロッソ氏のトランペット、実に、実にうまい!
この曲を改めて聴いていたら、しばらく聴いていなかったピーター・ロバーツ氏のコルネットを思い出しました。
 注) Peter Roberts: 伝説的なソプラノコルネットの名手: Grimethorpe Colliery Band, solo soprano-cornet player

そして、長い間気になっていたこの歌の歌詞を探し当て、ほぼ直訳し、半世紀を超える気がかりを一つクリアーしました。
同じく、Youtube で見つけたこの曲のビデオクリップがまた、素晴らしい。
1961年ごろの映画かテレビ番組でこの歌を歌うシーンのようで、フィルムで撮られています。これが、イタリアン・ネオ・リアリズム映画の雰囲気そのままで、大変ノスタルジック。過ぎし日のさまざまな名作映画を思い起こさせます。


∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥


"ballata della tromba"
トランペットのバラード



Ricordo il suono di una tromba
トランペットの あのひびきの追憶

in quel cortile senza sole
日も射さぬ あの中庭で

e suonava
鳴っていた!

e suonava
鳴っていた!

tu piangevi
君は 泣いていた


(tromba)


ballata triste di una tromba
トランペットの 悲しいバラード

per un addio senza parole
言葉なき 別れのために

e suonava
鳴っていた!

e suonava
鳴っていた!

ti perdevo
君を 失っていた


(tromba)


Francesco Pisano / Nini Rosso:土のちり 暫定直訳

 
∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥

Bravo !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

2'39"
"ballata della tromba" トランペットのバラード
Trumpet: Nini Rosso
Composed: Francesco Pisano
Lyrics: Francesco Pisano / Nini Rosso

∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥


素晴らしい曲を聴いて、この曲の邦題を振り返って調べてみると、悲しい現実が……

日本の、気骨あるどころか恥さえ知らぬ文化の一つの証拠:

この曲に日本語歌詞をつけた「夕焼けのトランペット」と題するレコードのジャケットには、日本語の歌詞が原作詞者名とイタリア語原詞を添えて、堂々と "訳詞" として印刷されています。

「夕焼けのトランペット」レコードジャケットの写真

この邦語歌詞を、上記弊直訳と比べると相違は明らか、"トランペット" の単語一つの他には、両者に共通の単語は皆無。つまり、違い過ぎて比べようもない全く別物です。
共通の単語がない別物であるのみならず、原詞に無関係な上、正反対のイメージの単語が次々と並べられ、全編を貫いています。
「日の射さない中庭で」が「夕焼けの空遠く」になってしまうのですから、何をか言わんや。
それもまた、これ以上陳腐で軽薄で幼稚な歌詞もそう多くはないと思われ、少なくとも私は、他に聞いたことがありません。

これは訳詞ではなく、捏造歌詞です。
それを訳詞と称することは、著作権侵害でしょう?
仮に外国人作者から "訳詞すること" の了解を得たとしても、この "訳" の内容は "著作物の同一性保持権" の明白な侵害、犯罪でしょう?
法的にどうあれ、それ以上に、我々、レコードのユーザー、音楽愛好家を愚弄しています。

訳詞者名の "音羽たかし" はキングレコード発売のレコードで数々の歌詞の訳者として使われていて、これは偽名である、とネット上でいわれています。 
"音羽" の名は当時キングレコードの社屋があった文京区音羽の町名から取られたと思われます。"たかし" はおそらく、キングレコードを含む講談社関連会社が当時のあの辺りとしては高層のビル内にあったので、自社オフィスの位置の高さからでも取っているかと推察されます。
いずれにしても、ふざけた、人を馬鹿にした偽名は、あたかも「恥知らずのキングレコード」とでもいう架空のイメージを自ら具現しているかのようでもあります。

ごく普通に考えて、この日本語歌詞で歌った歌手ザ・ピーナッツの二人に、非はないと思います。


注)当ブログに "ballata della tromba" の原語歌詞を掲げること、あるいはその翻訳を掲げること、いずれも現時点で作詞者の著作権侵害にあたります。
したがって、当初は歌詞を載せるつもりはなかったのですが、不可解な日本語タイトルのルーツを調べるうちに、この歌の日本語訳とされる歌詞を見つけ、そのあまりにデタラメな内容に驚きました。
その余りと言えばあまりの嘘八百を重く受け止めた結果、"悪行の結果の是正" の大義名分の下、当ブログに原文歌詞とそのほぼ直訳による日本語歌詞を掲げることと致します。
ここに、原詞とその日本語直訳を掲載していることに対して、異議あるいは何らかの不都合があると思われる方は、その理由とともに、コメント欄を通じてその旨ご連絡いただけますようお願い致します。


改訂:2018.11.09 著作権関連注釈追記 レコードジャケット写真掲載
2019.01.14 注釈追記分末梢訂正
2020.05.16 末梢表現変更
2023.04.20 末梢表現変更
2023.12.21 末梢表現変更 アイコンのリンク修正



0 件のコメント:

コメントを投稿

      ********** 投稿要領 **********
1. [公開] ボタンは記入内容を管理者宛に送信し即公開はしません
 (サイト劣悪仕様により当該文字列変更不能)
2. 非公開希望の場合もその旨記述しこのボタンで送信して下さい
3. 送信された記述内容は管理者の承認を経て原則公開されます
4. 反公序良俗, 政治的偏向過剰, 宣伝, 広告, スパム等は不可
      **********************************