春が来たなら
春が来たなら 花が咲いたら
木のかげに小さな椅子に腰掛けて
すつと遠くを見てくらさう
そしてとしよりになるだらう
僕は何もかもわかつたやうに
灰の色をした靄のしめりの向こうの方に
小さなやさしい笑顔を送らう
僕は余計な歌はもう歌はない
手をのばしたらそつと花に触れるだらう
春が来たなら ひとりだつたら
木のかげに小さな椅子に腰掛けて
すつと遠くを見てくらさう
そしてとしよりになるだらう
僕は何もかもわかつたやうに
灰の色をした靄のしめりの向こうの方に
小さなやさしい笑顔を送らう
僕は余計な歌はもう歌はない
手をのばしたらそつと花に触れるだらう
春が来たなら ひとりだつたら
立原道造 1914-1939 未刊詩篇より
出典:立原道造詩集 1988 岩波書店
改訂:2019.02.26 誤植訂正
2019.07.15 アイコンLink修正
2024.05.10 アイコンLink再修正
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