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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2019-02-26

立原道造 「春が来たなら」


未刊詩篇より





春が来たなら


春が来たなら 花が咲いたら
木のかげに小さな椅子に腰掛けて
すつと遠くを見てくらさう
そしてとしよりになるだらう
僕は何もかもわかつたやうに
灰の色をしたもやのしめりの向こうの方に
小さなやさしい笑顔を送らう
僕は余計な歌はもう歌はない
手をのばしたらそつと花に触れるだらう

春が来たなら ひとりだつたら



立原道造 1914-1939 未刊詩篇より



出典:立原道造詩集 1988 岩波書店



改訂:2019.02.26 誤植修正
2019.07.15 アイコン埋込リンク誤記訂正



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