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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-11-10

立原道造「ふるさとの夜に寄す」


拾遺詩篇より



ふるさとの夜に寄す



やさしいひとらよ たづねるな!
———なにをおまへはして来たかと 私に
やすみなく 忘れすてねばならない
そそぎこめ すべてを 夜に………

いまは 嘆きも 叫びも ささやきも
暗いみどりの闇のなかに
私のためには 花となれ!
咲くやうに にほふやうに

この世の花のあるやうに
手を濡らした眞白い雫の散るやうに———
忘れよ ひとよ………ただ! しばし!

とほくあれ 限り知らない悲しみよ にくしみよ………
ああ帰つて来た 私の横たはるほとりには
花のみ 白く咲いてあれ! 幼かつた日のやうに




立原道造 1914-1939 拾遺詩篇より



出典:立原道造詩集 1988 岩波書店


改訂: 2018.12.16 誤植訂正 紙片→詩篇

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