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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

改訂情報:


- The Alexander Brothers : Nobody's Child リードに加筆, 一部記述変更

- ホセ・カレーラス「光さす窓辺」 対訳付き原語歌詞掲載

2020-03-31

白鳥英美子さん「花」


あいにくの雪景色となってしまった今年の桜ですが、それもまた風情。とはいえ寒いのは苦手です。 寒空に何の己の桜かな。 今年の "花" は、白鳥英美子さんの軽妙な歌声を…… 特上の伴奏とともに。




"お" と "を" の発音の違い:
"お" は [o]、"を" は [wo] が歴史的に正しいらしい。といっても千年ほど前に [wo] は [o] に統一されてしまったといわれてます。
しかし、地域によっては今なお [wo] の発音が生きているようです。長野や愛媛の地名が挙げられることもあります。
私も、[wo] の発音に親近感がありますが、それはたぶん育った地域の言葉によるのではなく、「お」と「を」は明確に異なる単語であってそれを文字で書き分ける必要があり、そこにそれぞれの存在理由があることを意識しているせいだと思います。発音を区別できるのであれば、そうするのがベストだと思うわけです。
それと同じようなことが「わ…、」と「…は、」についてもいえるのですが、いずれも発音は [wa] で、これには異なった発音が存在しません。
千年以上前の日本語には [ha] という音はなく、代わりに[pa] の音が用いられていたのだそうです。因みに奈良時代には「母」は [papa] と発音されていて、それが [fafa] に変わり、更に [haha] に変わったのだそうです。(出典忘失)


夕されば 小倉をぐらの山に 鳴く鹿は
今夜こよひは鳴かず いねにけらしも

        崗 本 天 皇 をかもとのすめらみこと:万葉集 1511


奈良・飛鳥時代の万葉仮名では、上記現代語訳で「今夜は」と訳されている係助詞の "は" には、"波" の文字が当てられています。現代語ではこの字を通常 "は" と読みますがまた "ぱ" とも読みます、例:電波。そうすると、現代の「今夜はこよいわ」に相当する万葉集の頃の日本語は「今夜波こよひぱ」(koyoi-pa) であったということになりそうです。
…となると、係助詞の "は" を [pa] でも [ha] でもなく [wa] と発音するのは、なぜ、いつから?



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  花


春のうららの 隅田川すみだがわ
のぼりくだりの 船人ふなびと
かひのしづくも 花と散る
ながめを何に たとうべき

見ずやあけぼの つゆあびて
われにもの言う 桜木さくらぎ
見ずやゆうぐれ 手をのべて
われさしまねく 青柳あおやぎ

にしきおりなす 長堤ちょうてい
るればのぼる おぼろづき
げに一刻いっこくも 千金せんきん
ながめを何に たとうべき


武島羽衣


歌詞出典:ja.wikipedia.org


注)うらら=麗ら•か〔形動•ナリ活用〕と同義で、あるいはその名詞的用法かとも思われるがかなり珍しいのでは(全訳+俗解)
しかしこれは、源氏物語「胡蝶」の巻で詠まれた和歌、

「春の日の うららにさして 行く船は 棹のしづくも 花ぞちりける」

によったもの、とする『源氏物語』の研究者として名高い玉上琢弥氏の見解 (-wikipedia) に信憑性があります。第一連には、春、うらら (極めて稀な単語)、船、棹 (櫂)、しずく、散る、等々数多くの単語が「胡蝶」で詠まれている歌「春の日の」と共通であり、羽衣氏の創作というより古典作品の焼き直しに過ぎないように思われます。

注)あけぼの=曙〔名〕ほのぼのと夜が明けはじめるころ, その様子(辞泉+俗解)
注)青柳=青々と葉をつけた柳 (辞泉)
注)錦=1.種々の色糸で地色と文様を織り出した織物の総称 2.美しいもの, りっぱなものをたとえていう語「錦織りなす紅葉」(辞泉)
注)くるれば=暮るれ〔暮るる•自動•下二•連体〕+ ば〔接助〕(全訳)
注)げに=実に〔副〕②感動を込めて下の語を強調する意を表す, 本当に, 実に(全訳)

注)げに一刻も千金の=これは、中国北宋の政治家、文豪、書家、画家、蘇軾そ しょくの詩「春夜」の一節「春宵一刻値千金」(春の夜のすばらしさは、ひとときが千金にもあたいするほど貴重なものだ)からの着想である (-wikipediaより概略) 。この詞の結句もまた古典作品からの借り物、この詞を羽衣氏の創作だとは言い難い。


参照:学研 全訳古語辞典 改訂第二版 2014 学研 (全訳)
小学館 全文全訳 古語辞典 2004 小学館 (全文全訳)
小学館 大辞泉 1995 小学館 (辞泉)


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Brava !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 2’51“
「 花 」
作詞:(武島羽衣)
作曲:滝廉太郎
Sop.:白鳥英美子


改訂:2020.04.01 "お"と"を"の発音の違い詳細加筆
2020.04.14 アイコン変更
2024.05.14 作詞の経緯への疑義を注)に加筆, 参照図書誤記訂正,



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