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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-09-15

立原道造「南国の空青けれど」


後期草稿詩篇 より



南国の空青けれど



南国の空青けれど
涙あふれて やまず
道なかばにして 道を失ひしとき
ふるさと とほく あらはれぬ

辿り行きしは 雲よりも
はかなくて すべては夢にまぎれぬ
老いたる母の微笑のみ
わがすべての過失を償ひぬ

花なれと ねがひしや
鳥なれと ねがひしや
ひとりのみ なにをなすべきか

わが渇き 海飲み干しぬ
かなたには 帆前船 たそがれて
星ひとつ 空にかかる




立原道造 1914-1939 後期草稿詩篇 より



出典:立原道造詩集 1988 岩波書店


注)南国=秀でた建築家でもあった道造は大学卒業後、教授の推薦を得て建築事務所に勤め始めるが一年程のち胸を患い休職し静養。11月下旬 "南方の豊穣を夢見て" 長崎への旅に出るが、十二月半ば、喀血し寝台車で帰京するも危篤となり、翌3月29日、療養先で亡くなってしまう。享年26。
 - 出典収録の年譜及び解説より抄録


改訂:2020.06.10 注記出典明記
2023.08.11 アイコン埋め込みリンク誤り修正



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