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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-09-17

中原中也「盲目の秋 III」


中原中也「山羊の歌」より




盲目の秋



   Ⅲ


私の 聖母サンタ・マリヤ
  とにかく私は血を吐いた! ……
おまへが情けをうけてくれないので、
  とにかく私はまゐつてしまつた……

それといふのも私が素直でなかつたからでもあるが、
  それといふのも私に意気地がなかつたからでもあるが、
私がおまへを愛することがごく自然だつたので、
  おまへもわたしを愛してゐたのだが……

おお! 私の 聖母サンタ・マリヤ
  いまさらどうしようもないことではあるが、
せめてこれだけ知るがいい――

ごく自然に、だが自然に愛せるといふことは、
  そんなにたびたびあることでなく、
そしてこのことを知ることが、そう誰にでも許されてはゐないのだ。


中原中也 1934 「山羊の歌」



出典:中原中也全詩集 P.61 1972 角川書店


関連記事:
     「盲目の秋 I」
     「盲目の秋 II」



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