花の教
心をとめて窺へば 花自 ら教あり。
朝露の野薔薇のいへる、
「艶なりや、われらの姿、
刺に生ふる色香とも知れ。」
麥生のひまに罌粟のいふ、
「せめては紅きはしも見よ、
そばめられたる身なれども、
験ある露の藥水を
盛りさゝげたる盃ぞ。」
この時、百合は追風に、
「見よ、人、われは言葉なく
法を説くなり。」
みづからなせる葉陰より、
聲もかすかに菫草、
「人はあだなる香をきけど、
われらの示す教曉らじ。」
朝露の野薔薇のいへる、
「艶なりや、われらの姿、
刺に生ふる色香とも知れ。」
麥生のひまに罌粟のいふ、
「せめては紅きはしも見よ、
そばめられたる身なれども、
験ある露の藥水を
盛りさゝげたる盃ぞ。」
この時、百合は追風に、
「見よ、人、われは言葉なく
法を説くなり。」
みづからなせる葉陰より、
聲もかすかに菫草、
「人はあだなる香をきけど、
われらの示す教曉らじ。」
Christina Rossetti 1830-1894 "Consider the Lilies of the Field" from a Book of Poems
クリスティナ・ロセッティ 1830-1894「野の百合を思え」詩集より:上田 敏 訳
クリスティナ・ロセッティ 1830-1894「野の百合を思え」詩集より:上田 敏 訳
上田 敏 1905 「海潮音」 本郷書院
出典: 海潮音‐日本近代文学大系 52 明治大正譯詩集 1971 角川書店
参照:小学館 全文全訳古語辞典 2004 小学館
クリスティーナ・ジョージナ・ロセッティ(Christina Georgina Rossetti, 1830 - 1894)は、イギリスの詩人。
敬虔主義的な作風による作品を残した。画家・詩人ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの妹で、兄をはじめとするラファエル前派の画家たちの作品のモデルにもなった。
人道的な観点から、奴隷制や売春による性的搾取、動物実験に反対した。
-ja.wikipedia.org
出典: 海潮音‐日本近代文学大系 52 明治大正譯詩集 1971 角川書店
参照:小学館 全文全訳古語辞典 2004 小学館
注)艶なりや=なまめかしくあでやかで美しいこと 優美
注)生ふる=育つ
注)…とも=〈連語:格助詞ト+係助詞モ〉…でもあると
注)麥生のひま=麦畑に伸びる麦の間 (出典注釈)
注)せめては紅きはしも見よ=せめて先端に咲く赤い花も見てほしい→麦畑の雑草として花も咲かぬうちに抜かずに…(土のちり)
注)そばめられたる身=そばめ〈そばむ・四段已然・視線を逸らす〉+られたる身→雑草として抜かれてしまうこの私 (土のちり)
注)験ある=ききめ 効用 などがある→阿片の麻酔作用を示唆 (出典注釈)
注)法を説く=[原詩]純潔について教えを垂れる (出典注釈)
注)あだなる香=あだなる〈徒・形動ナリ連体>+香→無用で中身のない香り
注)…きけど=…利けど→嗅いでも
注)曉らじ=暁らじ→悟らじ (漢字ペディア)
クリスティーナ・ジョージナ・ロセッティ(Christina Georgina Rossetti, 1830 - 1894)は、イギリスの詩人。
敬虔主義的な作風による作品を残した。画家・詩人ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの妹で、兄をはじめとするラファエル前派の画家たちの作品のモデルにもなった。
人道的な観点から、奴隷制や売春による性的搾取、動物実験に反対した。
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