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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-09-13

立原道造「また落葉林で」


詩集「優しき歌 II」より



V また落葉林で



いつの間に もう秋! 昨日は
夏だつた……おだやかな陽気な
陽ざしが 林のなかに ざわめいてゐる
ひとところ 草の葉のゆれるあたりに

おまへが私のところからかへつて行つたときに
あのあたりには うすい紫の花が咲いてゐた
そしていま おまへは 告げてよこす
私らは別離に耐へることが出来る と

澄んだ空に 大きなひびきが
鳴りわたる 出発のやうに
私は雲を見る 私はとほい山脈やまなみを見る

おまへは雲を見る おまへはとほい山脈を見る
しかしすでに 離れはじめた ふたつのまなざし……
かへつて来て みたす日は いつかへり来る?




立原道造 1914-1939 優しき歌 II より



出典:立原道造詩集 1988 岩波書店



改訂:2019.06.30 タイトル誤植訂正 道三→道造
2019.06.30 記事タイトル数字削除



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