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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-10-05

ハインリッヒ・ハイネ「ローレライ」

ローレライという歌、当然、子供のころから知っているわけですが、メロディーに親しみを感じてはいたものの、歌詞の内容をどう受け止めて良いのか判らなくて、好きになれずにいました。ところが…


数年前、YouTube で土居裕子さんの歌うローレライを聴いて、あっと驚き、目(耳?)を開かれました。

土居裕子さん、この歌を、あたかも彼女自身がローレライになり切ったかのように、明るく、軽やかに、高らかに、歌い上げます。
歌詞の最後の行「くすしき 魔 歌 まがうた歌うローレライ 」のところでは、“ ロ〜〜レライ!” とビブラートもかかって、痛快、実に楽しい。思わず笑いがこぼれます。

残念ながら、今は、 YouTube から消えてしまっているので、埋込はおろかここでリンクをお知らせすることも叶いません。

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ネットではこの歌をドイツ語で楽しむことができます。
歌詞はハインリッヒ・ハイネの詩で、近藤朔風氏による名訳が、ローレライの歌の歌詞として広く親しまれています。
しかし、ここでは、ドイツ語で歌われる歌詞を楽しみたく、片山敏彦氏のハイネ詩集に載っている、より原詩に近い訳を添えて掲げます。

ところで、ドイツ語の詩の最後の行が、"Die Loreley getan." となっていることに気が付きました。
この "Loreley" には定冠詞がついているので、人としてのローレライ、「歌うローレライ」を指すのではなく、「ローレライ伝説・物語」を指し、それが「成った、完遂した、成就した!」の意と思われます。
くだけて言えば、「ローレライ… やった!」という感じでしょうか。

それでこそ、ハイネ。
この歌の受け止め方、判りました。
女性の本来的な特質に潜む、幾分かのあるいは多分な、魔性。激しい流れも険しい岩も、たとえにすぎぬ。
舟人よ、すなわち世の男どもよ、気を付けられたし・・・。

土居裕子さんが、歌詞「歌うロ〜レライ」を、明るく高らかに歌っているのは、原詩に照らして、大正解だと改めて思います。

曲の終わりに、詩の最後の2行が繰り返して歌われます。その繰り返しにのみ、土のちり 訳を添えました。

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クリップは、Fischer Chöre というグループのコーラス。
大きな船で揺られているようなゆったりとしたリズム、うねりに波に漂うような、心地よさがいいですね。
これは、指揮者の功績でしょうか。

 
  Bravo !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

3'33"

"Die Loreley" (Ich Nicht, Weiß Soll Es Bedeuten)
Comp: Friedrich Silcher
Words: Heinrich Heine
Chorus: Fischer Chöre
Trumpet: Rüdiger Baldauf


Die Loreley
ローレライ

1.
Ich weiß nicht, was soll es bedeuten,
わが心かくうれわしき

Daß ich so traurig bin,
その故をみずから知らず。

Ein Märchen aus uralten Zeiten,
いと古き世の物語、

Das kommt mir nicht aus dem Sinn.
わが思うことしげし。

Die Luft ist kühl und es dunkelt,
夕さりて風はすずしく

Und ruhig fließt der Rhein;
静かなりライン河。

Der Gipfel des Berges funkelt,
沈む日の夕映えに

Im Abendsonnenschein.
山のは照りはえつ。

2.
Die schönste Jungfrau sitzet
いわおにすわれるは

Dort oben wunderbar,
うるわしき乙女かな。

Ihr gold’nes Geschmeide blitzet,
こんじきに宝石いしはきらめき、

Sie kämmt ihr goldenes Haar,
こんじきの髪く乙女。

Sie kämmt es mit goldenem Kamme,
きんの櫛、髪を梳きつつ

Und singt ein Lied dabei;
歌うたうその乙女、

Das hat eine wundersame,
聞ゆるは、くすしく強き

Gewalt’ge Melodei.
力もつその歌のふし。

3.
Den Schiffer im kleinen Schiffe,
小舟やる舟びとは

Ergreift es mit wildem Weh;
歌聞きて悲しさ迫り、

Er schaut nicht die Felsenriffe,
思わずも仰ぎながめつ。

Er schaut nur hinauf in die Höh.
乗り上ぐる岩も気づかず。

Ich glaube, die Wellen verschlingen
舟びとよ、心ゆるすな、

Am Ende Schiffer und Kahn,
阿波にまれ果てなん。

Und das hat mit ihrem Singen,
されどああ歌の強さよ、

Die Loreley getan.
甲斐かいあらず舟は沈みぬ。

(繰り返し)
Und das hat mit ihrem Singen,
されど歌につられて舟は沈みぬ、

Die Loreley getan.
ローレライ 成就せり!



注)阿波 = 波 の意


Heinrich Heine 1827 "Ich weiß nicht, was soll es bedeute" aus Buch der Lieder
"わが心かく愁わしき" 詩集「歌の本」より
ハインリッヒ・ハイネ:片山敏彦 訳
(繰り返し2行のみ 土のちり 訳)




改訂:2017.10.07 末梢表現変更 幾分かあるいは多分の → 幾分かのあるいは多分な、
2017.10.09 原語タイトル追記 レイアウト変更
2018.04.13 ブログ・リニューアルに対応
2018.07.17 訳語加筆改変 歌に釣られて → されど歌につられて
2018.07.26 レイアウト細部修正
2021.07.10 アイコン埋込リンク修正
2024.01.13 ニックネーム変更を反映し 土のちり-Uriah → 土のちり, 動画埋め込みサイズ修正
2024.01.19 Link 土井裕子さんの歌う「ローレライ」追記 他



2 件のコメント:

  1. 私は船乗りで、車は運転しませんが、要は「脇見運転」ですね!? 街を歩いていて、その昔「袖にした女」が奥方よりも「魅力的に」そこにあることに気づいた!?   ♪ 能くある話じゃないか~~~~~~~!

    返信削除
    返信
    1. なるほど!
      船頭さんの視点からのコメント、興味深いですね。
      このような、筆者とは切り口の異なるご意見やご感想をいただけるのは大変ありがたくブロガー冥利につきます。
      ありがとうございます。

      削除

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