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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-10-11

中原中也「追懐」


中原中也「未刊詩篇」より



追懐


あなたは私を愛し、
私はあなたを愛した。

あなたはしつかりしてをり、
わたしは真面目であつた。───

人にはそれが、嫉ましかつたのです、多分、
そしてそれを、偸まうとかゝつたのだ。

嫉み羨みから出發したくどきに、あなたは乗つたのでした、
──何故でせう?──何かの拍子……

さうしてあなたは私を別れた、
あの日に、おお、あの日に!

曇つて風ある日だつたその日は。その日以來、
もはやあなたは私のものではないのでした。

私は此處にゐます、黄色い灯影に、
あなたが今頃笑ってゐるかどうか、──いや、ともすればそんなこと、想つて
 ゐたりするのです

(一九二九・七・一四)               
   

中原中也 1929 未刊詩篇


出典:中原中也全詩集 P.466 1972 角川書店

注)嫉まし = ねたまし
注)偸まう = ぬすもう
注)羨み = うらやみ


改訂:2018.07.23 レイアウト更新



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