初恋
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅 の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅 の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
島崎藤村「初恋」- 詩集「若菜集」より
出典:藤村詩集 - 島崎藤村自選 改版 1995 岩波書店
注)まだあげ初めし…= まだ〔未だ•副詞•今なお/未だに〕+ あげ〔上ぐ•自カ四•連用•上げる行為〕+ 初め〔初む〈そむ〉•接尾語マ下二•連用•初める〕+ し〔き•過去の助動詞•特殊•連体•受ける語を過去とす〕上げ初めて間もない…(全訳+俗解)
注)(前髪) の= (前髪) + の〔格助詞•体言や体言に準ずる語に付き•主語であることを示す〕(全訳+俗解)
注)花櫛=造花で飾ったさしぐし (大辞泉)
注)(花櫛) の=(花櫛) + の〔格助詞•連用格=連用修飾語をつくる•比喩〕(花櫛)のように(な) (全訳)
注)わがこゝろなきためいきの=私の心ならぬ不快なため息が (俗解)
注)君が情けに=君〔人代名〕+ が〔格助詞•所有所属•の〕+ 情け〔名•情愛/思いやり〕+ に〔格助詞•動作や作用の原因/理由•によって〕(全訳+俗解)
注)おのづからなる (細道)=君と我の会う瀬ゆえにできた (細道)(俗解)
注)かたみぞと=形見 + ぞ〔係助詞•問い•であるか〕+ と〔副詞•そう,そのように〕(全訳+俗解)
参照:学研 全訳古語辞典 改訂第二版 2014 (全訳)
大辞泉 1995 小学館 (大辞泉)
大辞泉 1995 小学館 (大辞泉)
改訂:2020.03.28 注釈末梢変更
2021.03.05 注釈末梢変更
2021.03.05 注釈末梢変更
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