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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2020-03-10

島崎藤村「初恋」


詩集「若菜集」より

  - まだあげ初めし前髪の … …




初恋


まだあげめし前髪まへがみ
林檎りんごのもとに見えしとき
前にさしたる花櫛はなぐし
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅うすくれなゐ の秋の
人こひめしはじめなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋のさかづき
君がなさけみしかな

林檎畑のの下に
おのづからなる細道ほそみち
が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ




島崎藤村「初恋」- 詩集「若菜集」より



出典:藤村詩集 - 島崎藤村自選 改版 1995 岩波書店


注)まだあげ初めし…= まだ〔未だ•副詞•今なお/未だに〕+ あげ〔上ぐ•自カ四•連用•上げる行為〕+ 初め〔初む〈そむ〉•接尾語マ下二•連用•初める〕+ し〔き•過去の助動詞•特殊•連体•受ける語を過去とす〕上げ初めて間もない…(全訳+俗解)
注)(前髪) の= (前髪) + の〔格助詞•体言や体言に準ずる語に付き•主語であることを示す〕(全訳+俗解)
注)花櫛=造花で飾ったさしぐし (大辞泉)
注)(花櫛) の=(花櫛) + の〔格助詞•連用格=連用修飾語をつくる•比喩〕(花櫛)のように(な) (全訳)
注)わがこゝろなきためいきの=私の心ならぬ不快なため息が (俗解)
注)君が情けに=君〔人代名〕+ が〔格助詞•所有所属•の〕+ 情け〔名•情愛/思いやり〕+ に〔格助詞•動作や作用の原因/理由•によって〕(全訳+俗解)
注)おのづからなる (細道)=君と我の会う瀬ゆえにできた (細道)(俗解)
注)かたみぞと=形見 + ぞ〔係助詞•問い•であるか〕+ と〔副詞•そう,そのように〕(全訳+俗解)


参照:学研 全訳古語辞典 改訂第二版 2014 (全訳)
大辞泉 1995 小学館 (大辞泉)


改訂:2020.03.28 注釈末梢変更
   2021.03.05 注釈末梢変更



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