フィッシャー=ディスカウが歌った、シューベルトの歌曲集「冬の旅」、我が家では長い年月にわたって、モノーラル LP、カセットテープ、CD、LD、と様々な媒体で聞いてきた。
ペーター・シュライアーによる全曲ライブも聴きに行った。
ペーター・シュライアーによる全曲ライブも聴きに行った。
妻が入院のたびに持っていく荷物には、いつでも「冬の旅」の CD が必須、他、カレーラスの歌曲やあれこれのオペラアリア集など、数枚の CD が伴った。
入院中に聴く音楽に、冬の旅?・・・主治医の先生も、難病患者の心のケアに心を砕いてくださる立場から、怪訝に思われたに違いない。しかし、「珍しいですね・・私もこれは・・」と、巧みに会話を進めて真意を確かめ、懸念を払拭されていたかのようだった。
∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴
私自身にも、いつの間にかこだわりができしまって、最近は伴奏者を選ぶようになっています。
フィッシャー=ディスカウが、デビューしてから60年代の中ごろまで、何度も一緒に録音した、ジェラルド・ムーアの伴奏が、やはり一番好ましい。歌とピアノが、わけ隔てなく表裏一体で、一つの表現をしているように感じます。
円熟期の CD にある、イエルク・デームスの伴奏もそれに次いでいいですね。
最晩年になって、LD に収録した時の、マレイ・ぺライアの伴奏がいい。
ぺライアが、歌手に遠慮なくしっかりとピアノを鳴らすことがあっても、なぜか歌の邪魔にならない、不思議な魅力があります。
私の好みでなかったのは、よりによって、私の大好きな二人の巨匠ピアニストの伴奏。
ポリーニとブレンデルがそれぞれ伴奏した録音・録画を、大いに期待して、一部を聴いてみましたが・・・ピアノの音がなにか気に障る、合わない、歌のじゃま・・・。
彼らは、花形ピアニストなのだから、自己主張は当たり前。ネームバリューで客寄せをしようとする企画が悪いのでしょう。
しかし、LD で片鱗を見せた、マレイ・ぺライアもまた、花形ピアニストの一人なのです。彼は、自身の "弾き振り" でモーツアルトのピアノ協奏曲 全 27 曲を録音したほどで、一ピアニストにとどまらず、音楽に幅広く取り組む姿勢があって、伴奏にも力量を発揮できたのかもしれません。
∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴
ここでは「冬の旅」全 24 曲の中から 第 5 曲「菩提樹」
菩提樹
泉に沿いて 繁る菩提樹
慕い行きては うまし夢見みつ
幹には彫りぬ ゆかし言葉
うれし悲しに 訪しそのかげ
今日もよぎりぬ 暗き小夜中
真闇に立ちて 眼とずれば
枝はそよぎて 語るごとし
「来よ いとし侶 ここに幸あり。」
面をかすめて 吹く風寒むく
笠は飛べども 棄て急ぎぬ
はるか離りて 佇まえば
なおも聞こゆる「ここに幸あり。」
はるか離りて 佇まえば
なおも聞ここゆる「ここに幸あり。」
「ここに幸あり。」
慕い行きては うまし夢見みつ
幹には彫りぬ ゆかし言葉
うれし悲しに 訪しそのかげ
今日もよぎりぬ 暗き小夜中
真闇に立ちて 眼とずれば
枝はそよぎて 語るごとし
「来よ いとし侶 ここに幸あり。」
面をかすめて 吹く風寒むく
笠は飛べども 棄て急ぎぬ
はるか離りて 佇まえば
なおも聞こゆる「ここに幸あり。」
はるか離りて 佇まえば
なおも聞ここゆる「ここに幸あり。」
「ここに幸あり。」
作詞:Wilhelm Müller 訳詞:近藤朔風
∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴
フィッシャー=ディスカウが 65 歳、歌手引退の 2 年前、1990 年に収録した、マレイ・ぺライア伴奏による「冬の旅」全曲演奏から「菩提樹」。
さすがに声の衰えは否めませんが、生涯歌い続けたリートへの愛情にあふれています。
55年前、デビューまもなくのモノラルLPレコードの時代から聞いているので、ほぼ最後と思えるこの収録には、感慨ひとしおです。
そこにぺライアが、粒立ちのいい際立つ音色で、絶妙に歌を引き立てる伴奏を加えて、楽しませてくれます。
オフマイクによる録音がまた秀逸で、声とピアノの響きを余すところなくとらえていて、演奏者が輝いています。
∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴
ビデオクリップ差替え:
当初埋め込んだ、マレイ・ぺライア伴奏のクリップが、YouTube より削除されてしまっていることが判りました。
代わりに、ジェラルド・ムーアの伴奏によるものを埋め込みます。
当初埋め込んだ、マレイ・ぺライア伴奏のクリップが、YouTube より削除されてしまっていることが判りました。
代わりに、ジェラルド・ムーアの伴奏によるものを埋め込みます。
∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴
「冬の旅」より 第5曲 「菩提樹」
作曲: Franz Schubert 作詞: Wilhelm Müller
Br: Dietrich Fischer-Dieskau Pf: Gerald Moore
作曲: Franz Schubert 作詞: Wilhelm Müller
Br: Dietrich Fischer-Dieskau Pf: Gerald Moore
改訂: 2017.09.21 ビデオクリップ差替え
: 2018.11.20 ルビ表示誤り訂正 レイアウト更 末梢表現変更
: 2018.11.20 ルビ表示誤り訂正 レイアウト更 末梢表現変更
0 件のコメント:
コメントを投稿
********** 投稿要領 **********
1. [公開] ボタンは記入内容を管理者宛に送信し即公開はしません
(サイト劣悪仕様により当該文字列変更不能)
2. 非公開希望の場合もその旨記述しこのボタンで送信して下さい
3. 送信された記述内容は管理者の承認を経て原則公開されます
4. 反公序良俗, 政治的偏向過剰, 宣伝, 広告, スパム等は不可
**********************************