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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2016-09-12

李香蘭 映画 「私の鶯」


太平洋戦争末期、あの忌まわし時代に、特に国威発揚もしないこのような音楽映画が作られていたことを知って大変驚きました。



完成したのが1944 年 3 月。たぶん、戦局の暗雲が漂う中、映画どころではなかったはずで、完成しても公開されることはなかった。
1984 年に、残されていたフィルムが発見された。画質・音質の劣化が激しく、失われてしまった部分もあるようだが、貴重な映像。
当時、東方のパリと呼ばれることもあった美しい街、哈爾濱(ハルピン)を舞台に、全編のほとんどをロシア語による会話で物語が進む。そこで歌われるこの「私の鶯」も李香蘭がロシア語訳で歌っている。

懐古趣味に留まっているつもりはありません。
権力が暴力的になり、自由が、表現が、束縛されるとき、どうやって志を貫くか・・・ 戦意高揚以外の作品作りが難しくなったとき、先人達の政治的な局面を逆手に取った巧みな働きが実を結んだ良い例。
戦火に妻(母)を失ったうえ、引き裂かれた父と娘、その娘を慈しみはぐくんだ育ての親のロシア人音楽家、ロシア革命からの亡命音楽家たち・・・戦争に翻弄される人々のヒューマミズムを、あの時代に描き切ったのです。
学ぶものがあると捕らえています。

文末に、映画のイントロを記します。


  私の鶯

    霧の深い宵も 小雪積もる夜半も
    過ぎし昔偲びて 想出して唄ふは
    愛し私の鶯か 夜毎 夢に見る

    聴け あれは雨の降る音
     聴け 風の音もするよ
    暗い冬は過ぎて
     花咲く春が来る

    ああ ヤイヤイヤイヤイ ヤイ それ まで・・・・


    窓に映る大空 鐘に祈る心
    胸にともるあかりは 誰も知らぬ燈火
    何故か我が鶯は 羽をふるわせて

    聞け あれは馬車のゆく音
     聞け 鈴の音もするよ
    いずこからの便り 東から
     春は来る

    ああ ヤイヤイヤイヤイ  ヤイヤイヤイヤイ
     アハハハハハ・・・・・
     ああああアハハハハア・・・・・

サトウ・ハチロー

映画「私の鶯」では、映画の中ほどで "幻のハルピン交響楽団" をバックに一連の歌詞とコーダを歌い、映画のラストシーン、育ての親の墓の前で、二連の歌詞を歌っています。このクリップでは、その二つの歌の部分を抜き出してつないでいます。


私の鶯
作詞:サトー・ハチロー 作曲:服部良一
Sop. 李香蘭 Orch. ハルピン交響楽団

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映画「私の鶯」(1943年、東宝、満映)※未公開

ハルビンを舞台に繰り広げられる音楽劇映画です。
1917年、ロシア革命によって追われ、シベリアから満州へ亡命してきたロシア帝室歌劇場の白系ロシア人歌手たちが、ある町で日本商社員の隅田に救われる。
しかし、その町にも戦火が迫り、オペラ歌手たちは隅田一家とともに数台の馬車に乗って町を脱出するが、途中で隅田は撃たれて負傷し、妻や幼い娘・満里子(マリヤ)や歌手たちを乗せた馬車とはぐれてしまう・・・
  監督・脚色 島津保次郎
  原作 大仏次郎
  撮影 福島宏
  音楽 服部良一

  映画:「私の鶯」 (上映時間:1時間40分)



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