薄暮の曲
シャルル・ボドレエル
時こそ今は水枝さす、こぬれに花の顫ふころ。
花は薫じて追風に、不断の香の炉に似たり。
匂も音も夕空に、とうとうたらり、とうたらり、
ワルツの舞の哀れさよ、疲れ倦みたる眩暈よ。
花は薫じて追風に、不断の香の炉に似たり。
痍に悩める胸もどき、ヴィオロン楽の清掻や、
ワルツの舞の哀れさよ、疲れ倦みたる眩暈よ、
神輿の台をさながらの雲悲みて艶だちぬ。
痍に悩める胸もどき、ヴィオロン楽の清掻や、
闇の涅槃に、痛ましく悩まされたる優心。
神輿の台をさながらの雲悲みて艶だちぬ、
日や落入りて溺るゝは、凝るゆふべの血潮雲。
闇の涅槃に、痛ましく悩まされたる優心、
光の過去のあとかたを尋めて集むる憐れさよ。
日や落入りて溺るゝは、凝るゆふべの血潮雲、
君が名残のたゞ在るは、ひかり輝く聖体盒。
花は薫じて追風に、不断の香の炉に似たり。
匂も音も夕空に、とうとうたらり、とうたらり、
ワルツの舞の哀れさよ、疲れ倦みたる眩暈よ。
花は薫じて追風に、不断の香の炉に似たり。
痍に悩める胸もどき、ヴィオロン楽の清掻や、
ワルツの舞の哀れさよ、疲れ倦みたる眩暈よ、
神輿の台をさながらの雲悲みて艶だちぬ。
痍に悩める胸もどき、ヴィオロン楽の清掻や、
闇の涅槃に、痛ましく悩まされたる優心。
神輿の台をさながらの雲悲みて艶だちぬ、
日や落入りて溺るゝは、凝るゆふべの血潮雲。
闇の涅槃に、痛ましく悩まされたる優心、
光の過去のあとかたを尋めて集むる憐れさよ。
日や落入りて溺るゝは、凝るゆふべの血潮雲、
君が名残のたゞ在るは、ひかり輝く聖体盒。
Charles Pierre Baudelaire 1857 Les Fleurs du Mal
「惡の華」より:上田 敏 訳 1905「海潮音」本郷書院
「惡の華」より:上田 敏 訳 1905「海潮音」本郷書院
出典:日本近代文学大系 52 明治大正訳詩集 角川書店
注)水枝 = 瑞枝 みずみずしい若枝
注)こぬれ = 木末 こずえ
注)顫ふ = ふるえる
注)薫じて = よい香りを放って
注)とうとうたらり、とうたらり = 能の ”翁” で呪文のように謡われる文言
注)清掻 = 歌を伴わない演奏
注)艶だつ = 優雅に あでやかになる
注)闇の涅槃 = néant vaste et noir 広大な虚無と暗黒
注)聖体盒 = 聖体顕示台(カトリック教会の儀式に用いる)
注)水枝 = 瑞枝 みずみずしい若枝
注)こぬれ = 木末 こずえ
注)顫ふ = ふるえる
注)薫じて = よい香りを放って
注)とうとうたらり、とうたらり = 能の ”翁” で呪文のように謡われる文言
注)清掻 = 歌を伴わない演奏
注)艶だつ = 優雅に あでやかになる
注)闇の涅槃 = néant vaste et noir 広大な虚無と暗黒
注)聖体盒 = 聖体顕示台(カトリック教会の儀式に用いる)
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改訂:2018.05.16 レイアウト変更
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