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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

改訂情報:


- 二人乗り自転車の歌 重要: たくさん分かち合う→運命を共有する (韻に託けて文法無視で意訳した前訳を改訂)

- ホセ・カレーラス「光さす窓辺」 対訳付き原語歌詞追記

2017-03-18

C.P. ボードレール「薄暮の曲」


「惡の華」より




薄暮くれがたの曲
    
シャルル・ボドレエル


時こそ今は水枝みづえさす、こぬれに花のふるふころ。
花は薫じて追風に、不断の香の炉に似たり。
匂も音も夕空に、とうとうたらり、とうたらり、
ワルツの舞の哀れさよ、疲れみたる眩暈くるめきよ。

花は薫じて追風に、不断の香の炉に似たり。
きずに悩める胸もどき、ヴィオロンがく清掻すががきや、
ワルツの舞の哀れさよ、疲れ倦みたる眩暈くるめきよ、
神輿みこしの台をさながらの雲悲みてえんだちぬ。

きずに悩める胸もどき、ヴィオロンがく清掻すががきや、
闇の涅槃ねはんに、痛ましく悩まされたる優心やさごころ
神輿みこしの台をさながらの雲悲みてえんだちぬ、
日や落入りておぼるゝは、るゆふべの血潮雲ちしほぐも

闇の涅槃ねはんに、痛ましく悩まされたる優心やさごころ
光の過去のあとかたをめて集むる憐れさよ。
日や落入りて溺るゝは、こゞるゆふべの血潮雲、
君が名残なごりのたゞ在るは、ひかり輝く聖体盒せいたいごう



Charles Pierre Baudelaire 1857 Les Fleurs du Mal
「惡の華」より:上田 敏 訳 1905「海潮音」本郷書院



出典:日本近代文学大系 52 明治大正訳詩集 角川書店

注)水枝 = 瑞枝 みずみずしい若枝
注)こぬれ = 木末 こずえ
注)顫ふ = ふるえる
注)薫じて = よい香りを放って
注)とうとうたらり、とうたらり = 能の ”翁” で呪文のように謡われる文言
注)清掻 = 歌を伴わない演奏
注)艶だつ = 優雅に あでやかになる
注)闇の涅槃 = néant vaste et noir 広大な虚無と暗黒
注)聖体盒 = 聖体顕示台(カトリック教会の儀式に用いる)


関連記事リンク: 中原中也「時こそ今は……」


改訂:2018.05.16 レイアウト変更
2019.03.21 関連記事リンク記載


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