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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-03-14

中原中也「春の日の歌」


中原中也「未刊詩篇」より




春の日の歌


ながれよ、あわき 嬌羞きょうしゅうよ、
ながれて ゆくか 空の國?
心も とほく 散らかりて、
エジプト煙草 たちまよふ。

ながれよ、冷たき 憂ひ祕め、
ながれて ゆくか 麓までも?
まだみぬ 顔の 不可思議の
咽喉のんどの みえる あたりまで……

午睡の 夢の ふくよかに、
野原の 空の 空のうへ?
うわあ うわあと 涕くなるか

黄色い 納屋や、白の倉、
水車の みえる 彼方かなたまで、
ながれ ながれて ゆくなるか?


中原中也 1938 「在りし日の歌」


出典:中原中也全詩集 P.166 1972 角川書店


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