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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-03-19

中原中也「時こそ今は……」


詩集「山羊の歌」より




時こそ今は……



時こそ今は花は香爐こうろ打薫うちくんじ、
そこはかとないけはひです。
しほだる花や水の音や、
家路をいそぐ人々や。

いかに泰子、いまこそは
しずかに一緒に、をりませう。
遠くの空を、飛ぶ鳥も
いたいけな情け、みちてます。

いかに泰子、いまこそは
暮るるまがき群青ぐんじょう
空もしずかに流るころ。

いかに泰子、いまこそは
おまえの髪毛かみげなよぶころ
花は香爐に打薫じ、


中原中也 1934 「山羊の歌」


注)打薫じ = うち薫じ すっかり良い香りを放っている
注)しほだる= 潮垂る 元気がない
注)籬 = 竹や柴などで目を粗く編んだ垣根
注)群青 = 藍青色 鮮やかな青

出典:中原中也全詩集 P.117 1972 角川書店


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改訂:2018.04.17 レイアウト変更
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