詩集「山羊の歌」より
時こそ今は……
時こそ今は花は香爐に打薫じ、
そこはかとないけはひです。
しほだる花や水の音や、
家路をいそぐ人々や。
いかに泰子、いまこそは
しずかに一緒に、をりませう。
遠くの空を、飛ぶ鳥も
いたいけな情け、みちてます。
いかに泰子、いまこそは
暮るる籬や群青の
空もしずかに流るころ。
いかに泰子、いまこそは
おまえの髪毛なよぶころ
花は香爐に打薫じ、
そこはかとないけはひです。
しほだる花や水の音や、
家路をいそぐ人々や。
いかに泰子、いまこそは
しずかに一緒に、をりませう。
遠くの空を、飛ぶ鳥も
いたいけな情け、みちてます。
いかに泰子、いまこそは
暮るる籬や群青の
空もしずかに流るころ。
いかに泰子、いまこそは
おまえの髪毛なよぶころ
花は香爐に打薫じ、
中原中也 1934 「山羊の歌」
注)打薫じ = うち薫じ すっかり良い香りを放っている
注)しほだる= 潮垂る 元気がない
注)籬 = 竹や柴などで目を粗く編んだ垣根
注)群青 = 藍青色 鮮やかな青
注)しほだる= 潮垂る 元気がない
注)籬 = 竹や柴などで目を粗く編んだ垣根
注)群青 = 藍青色 鮮やかな青
出典:中原中也全詩集 P.117 1972 角川書店
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