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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

改訂情報:


- The Alexander Brothers : Nobody's Child リードに加筆, 一部記述変更

- ホセ・カレーラス「光さす窓辺」 対訳付き原語歌詞掲載

2018-07-12

ニューヨークのため息 ヘレン・メリルさん


懐かしのヘレン・メリルさん。
ヘレンさんには、昔、直接お会いしたことがあるのです。が、しかし……



二十歳の頃、ラジオで聴いてその素晴らしさを知っていた、ヘレン・メリルさんの "helen merrill in tokyo" というアルバムをレコード屋の店頭で見つけ、さっそく購入。これも繰り返し聴いていました。

お気に入りはなんといっても "I'm A Fool To Want You."
歌詞はおよそ、道ならぬ恋の悩み苦しみ、理屈では割りきれぬ、揺れる心をうたったもの。
恋の悩みというようなものには、とんと興味はなかったのですが、それが何であれ "生きていくうえの苦悩や悲哀" には大いに興味があったので、深く悩み揺れる心情の吐露は、深く私の心にしみこみました。

間違っている、いけない、理性はそうささやく、しかし改めても改めても、繰り返してしまう……
「あなたなしではやっていけないの… I can't get along without you!」と、悲痛な感性の叫びのうちに沈没してしまいます。

これは、ジャズ独特の音楽性が伴っていないと、単なる退廃的な歌に終わってしまう、そういう歌だと思います。
歌い方の変化、いわゆる歌唱力による感情表現だけに頼らず、メロディーをコードの範囲内で変化させたり歌詞を繰り返したりするアドリブで、感情を音の変化に変えて表します。
このあたりが、センスであったりフィーリングであったりするところでしょう。
今このアルバムを聴くと、私にも "若い頃" があったのか…… などと思います。そんなものなかったと思っていたのですが。

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特別級のハスキーな声の美しさと、モダンジャズ黎明期のニューヨークで育ち歌い養ったフィーリング。
誰が言ったのか "ニューヨークのため息" とはよく言ったもので、彼女の魅力をうまくいい表していると思います。
よくある金髪美人ミュージッシャンの一人などと思う人がいたら、それはとんでもない見当違いです。

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二十歳台の半ば、私はある外国通信社の東京支局写真部員として働いていました。
当時の東京支局(アジア総支局)の支局長は通信社副社長 D. B. 氏。
なぜこんなことを書き始めたかというと、その支局長夫人が、Helen Merrill さん、その人!

あるとき、ささやかな社内パーティーがありました。それが何のためだったか、場所はどこだったか、そういうことは忘却の彼方。ただ、憧れのヘレンさんにお目にかかれるチャンス!
グラス片手にしばらくうろうろしていると、近くに、何かアパタイザーを手に持ったヘレンさんの姿が…… 一歩近づいて面と向かうと、視線が合ってにっこり、さて、ハローの挨拶をと思ったその時、ヘレンさんが手に持ったクラッカーが割れ、かけらが落ちて…………!
私は、すっと視線をそらして見なかったふり。それしかできませんでした。
それで… あぁ、"世紀の出会い" はあえなく幕。数カ月のち、支局長は転勤で新しい任地へ。
私はそれ以来クラッカーは口にしません…… いえ、それはウソ、グラハム・クラッカーを好んで食べてます。

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プレーヤーがなくて、今でも持っているレコードを聴けずにいましたが、先日、Youtube でこのアルバムの全曲を丸ごとジャケットの写真と共にアップしているクリップを見つけました。
全曲名と開始時間のリストと演奏者リストを文末に載せます。
埋め込みクリップは "I'm A Fool To Want You" のみを、開始 / 終了時間を指定して載せています。
(聴き終わった状態で、もう一度画面をクリックすると、アルバムの先頭から終わりの曲までの全曲再生が始まります。 "I'm A Fool To Want You" のみをもう一度聴きたい場合は、ブラウザーの再読み込み [↻]をクリックしてから、新しい画面でビデオ画面をクリックします)。

注)レコード・ジャケットの曲名表示に誤記があり、ビデオクリップもそれをそのまま書き写しています。
誤:I'm Fool To Want You
正:I'm A Fool To Want You


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Bravissima !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

4'07"
"I'm A Fool To Want You"
Composed: Joel Herron
Lyrics: Jack Wolf, Frank Sinatra
Performed: Helen Merrill


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Tracklist:

A1: 00:00 - Someday My Prince Will Come To Me
A2: 03:26 - It Never Entered My Mind
A3: 08:09 - Bewitched
A4: 11:10 - You Do Something To Me
A5: 14:06 - Teach Me Tonight
B1: 17:01 - I'm Fool To Want You
B2: 21:08 - My Favorite Things
B3: 23:10 - Good Morning Heartaches
B4: 27:18 - I Feel Pretty
B5: 30:16 - You'd Be So Nice To Come Home To

Credits:

Alto Saxophone, Clarinet – Shigeo Suzuki [鈴木重夫]
Baritone Saxophone, Bass Clarinet – Tadayuki Harada [原田忠幸]
Bass – Tatsuro Takimoto [滝本逹朗]
Drums – Takeshi Inomata [猪俣猛]
Piano, Celesta – Norio Maeda [前田憲男]
Tenor Saxophone, Flute – Jiro Inagaki [稲垣次郎]
Trumpet – Akira Nakano [仲野彰]
Vocals – Helen Merrill

- ビデオクリップ記載データより


改訂: 2020.07.04 レイアウト微調整 末梢表現変更


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