わが喫湮
おまへのその、白い二本の脛が、
夕暮、港の町の寒い夕暮、
によきによきと、ペエヴの上を歩むのだ。
店々に灯がついて、灯がついて、
私がそれをみながら歩いてゐると、
おまへが聲をかけるのだ、
どつかにはいつて憩みませうよと。
そこで私は、橋や荷足を見殘しながら、
レストオランに這入るのだ――
わんわんいう喧騒、むつとするスチーム、
さても此處は別世界。
そこで私は、時宜にも合わないおまへの陽気な顔を眺め、
かなしく煙草を吹かすのだ、
一服、一服、吹かすのだ……
夕暮、港の町の寒い夕暮、
によきによきと、ペエヴの上を歩むのだ。
店々に灯がついて、灯がついて、
私がそれをみながら歩いてゐると、
おまへが聲をかけるのだ、
どつかにはいつて憩みませうよと。
そこで私は、橋や荷足を見殘しながら、
レストオランに這入るのだ――
わんわんいう喧騒、むつとするスチーム、
さても此處は別世界。
そこで私は、時宜にも合わないおまへの陽気な顔を眺め、
かなしく煙草を吹かすのだ、
一服、一服、吹かすのだ……
中原中也 1934 「山羊の歌」
注)荷足 = 荷足船 にたりぶね 東京湾/相模湾あたりで使われていた小型の和船
注)時宜 = じぎ その時/場所にふさわしいこと
出典:中原中也全詩集 P.64 1972 角川書店
注)時宜 = じぎ その時/場所にふさわしいこと
出典:中原中也全詩集 P.64 1972 角川書店
改訂:2017.09.21 文字サイズ再調整 注釈配置変更
:2023.10.14 レイアウト更新
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