蜻蛉に寄す
あんまり晴れてる 秋の空
赤い蜻蛉が 飛んでゐる
淡い夕陽を 浴びながら
僕は野原に 立つてゐる
遠くに工場の 煙突が
夕陽にかすんで みえてゐる
大きな溜息 一つついて
僕は 石を拾ふ
その石くれの 冷たさが
漸く 手 中 で ぬくもると
僕は放して 今度は草を
夕陽を浴びてる 草を拔く
拔かれた草は 土の上で
ほのかほのかに 萎えてゆく
遠くに工場の 煙突は
夕陽に霞んで みえてゐる
赤い蜻蛉が 飛んでゐる
淡い夕陽を 浴びながら
僕は野原に 立つてゐる
遠くに工場の 煙突が
夕陽にかすんで みえてゐる
大きな溜息 一つついて
僕は 石を拾ふ
その石くれの 冷たさが
漸く 手 中 で ぬくもると
僕は放して 今度は草を
夕陽を浴びてる 草を拔く
拔かれた草は 土の上で
ほのかほのかに 萎えてゆく
遠くに工場の 煙突は
夕陽に霞んで みえてゐる
中原中也 1938 「在りし日の歌」より
出典:中原中也全詩集 P.240 1972 角川書店
注)蜻蛉 = トンボ
注)蹲んで = しゃがんで
注)漸く = ようやく
注)蜻蛉 = トンボ
注)蹲んで = しゃがんで
注)漸く = ようやく
改訂:2023.10.14 レイアウト更新
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