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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-06-15

へリベルタ・V・ポシンゲル「わかれ」


へリベルタ・フォン・ポシンゲル (Heriberte von Poschinger, 1849-?) は「ハインツ・オッセン」の筆名を持つドイツ女流詩人 : 上田敏「海潮音」解題より



わかれ

ふたりを「とき」がさきしより、
 晝 ひる 事 ことなくうちすぎぬ。
よろこびもなく 悲 かなしまず、
はたたれをかも 怨 うらむべき。

されど 夕闇 ゆうやみおちくれて、
 星 ほし 光 ひかりのみゆるとき、
 病 やまい 床 とこのちごのやう、
こころかすかにうめきいず。

    へリベルタ・フォン・ポシンゲル ---- 『詩集ししふ


Heriberte von Poschinger 1849-? “Geschieden”
上田 敏 訳 1905「海潮音」本郷書院



注)はた = 一方では また
注)たれをかも怨むべき = いったい誰を怨むというのか→ 恨む人などいない の意
注)たれ = 誰〔疑問詞〕
注)かも =〔複合係助詞〕か+も
注)か =〔疑問詞を承ける係助詞=判断不能な疑問であることを示す〕
注)も =〔疑問詞を承ける係助詞=承ける語を不確実なものとする〕
注)べき =〔助動詞 べし 連体形〕必要/当然の理を示す→ 極めて強い意志/確信/推量を表す

出典:日本近代文学大系 52 明治大正譯詩集 角川書店
参照:岩波 古語辞典 補訂版 1990 岩波書店

改訂:2021.12.20 脱字訂正 レイアウト更新



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