倦怠
倦怠の谷間に落つる
この眞ッ白い光は、
私の心を悲しませ、
私の心を苦しくする。
眞ッ白い光は、澤山の
倦怠の呟きを掻消してしまひ、
倦怠は、やがて憎怨となる
かの無言なる慘ましき憎怨………
忽ちにそれは心を石と化し
人はただ寝轉ぶより仕方もないのだ
同時に、果されずに過ぎる義務の數々を
悔いながらにかぞえなければならないのだ。
はては世の中が偶然ばかりとみえてきて、
人はただ、絶えず慄へる、木の葉のやうに
午睡から覺めたばかりのやうに
呆然たる意識の裡に、眼光らせ死んでゆくのだ
この眞ッ白い光は、
私の心を悲しませ、
私の心を苦しくする。
眞ッ白い光は、澤山の
倦怠の呟きを掻消してしまひ、
倦怠は、やがて憎怨となる
かの無言なる慘ましき憎怨………
忽ちにそれは心を石と化し
人はただ寝轉ぶより仕方もないのだ
同時に、果されずに過ぎる義務の數々を
悔いながらにかぞえなければならないのだ。
はては世の中が偶然ばかりとみえてきて、
人はただ、絶えず慄へる、木の葉のやうに
午睡から覺めたばかりのやうに
呆然たる意識の裡に、眼光らせ死んでゆくのだ
中原中也 1938 未刊詩篇
出典:中原中也全詩集 P.456 1972 角川書店
注)憎怨 = 怨憎(?) えんぞう/おんぞう 恨むこと 憎むこと
注)憎怨 = 怨憎(?) えんぞう/おんぞう 恨むこと 憎むこと
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