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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-06-21

中原中也「倦怠」


中原中也「未刊詩篇」より




倦怠


倦怠の谷間に落つる
この眞ッ白い光は、
私の心を悲しませ、
私の心を苦しくする。

眞ッ白い光は、澤山の
倦怠の呟きを掻消してしまひ、
倦怠は、やがて憎怨となる
かの無言なるいたましき憎怨………

忽ちにそれは心を石と化し
人はただ寝轉ぶより仕方もないのだ
同時に、果されずに過ぎる義務の數々を
悔いながらにかぞえなければならないのだ。

はては世の中が偶然ばかりとみえてきて、
人はただ、絶えず慄へる、木の葉のやうに
午睡から覺めたばかりのやうに
呆然たる意識の裡に、まなこ光らせ死んでゆくのだ


中原中也 1938 未刊詩篇



出典:中原中也全詩集 P.456 1972 角川書店


注)憎怨 = 怨憎(?) えんぞう/おんぞう 恨むこと 憎むこと


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