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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-06-04

中原中也「少女と雨」


未刊詩篇より




少女と雨


少女がいま校庭の隅に佇んだのは
其處は花畑があつて菖蒲の花が咲いてるからです

菖蒲の花は雨に打たれて
音樂室から来るオルガンの 音を聞いてはゐませんでした

しとしとと雨はあとからあとから降つて
花も葉も畑の土ももう諦めきつてゐます

その有様をジッと見てると
なんとも不思議な気がして来ます

山も校舎も空のもと
やがてしずかな囘轉をはじめ

花畑を除く一切のものは
みんなとつくに終つてしまつた 夢のやうな気がしてきます



中原中也 1936 (推定) 未刊詩篇


出典:中原中也全詩集 P.828 1972 角川書店



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