我がジレンマ
僕の血はもう、孤獨をばかり望んでゐた。
それなのに僕は、屡々人と対坐してゐた。
僕の血は爲す所を知らなかつた。
気のよさが、獨りで勝手に話をしてゐた。
後では何時でも後悔された。
それなのに孤獨に浸ることは、亦怖いのであつた。
それなのに孤獨を棄てることは、亦出来ないのであつた。
かくて生きることは、それを考へみる限りに於て苦痛であつた。
野原は僕に、遊べと云つた!
遊ばうと僕は思つた。――しかしさう思ふことは僕にとつて、
旣に餘りに社會を離れることを意味してゐるのであつた。
かくて僕は野原にゐることもやめるのであつたが、
又、人の所にもゐなかつた……僕は書齋にゐた。
そしてくされる限りにくさつてゐた、そしてそれをどうすることも出来なかつた。
それなのに僕は、屡々人と対坐してゐた。
僕の血は爲す所を知らなかつた。
気のよさが、獨りで勝手に話をしてゐた。
後では何時でも後悔された。
それなのに孤獨に浸ることは、亦怖いのであつた。
それなのに孤獨を棄てることは、亦出来ないのであつた。
かくて生きることは、それを考へみる限りに於て苦痛であつた。
野原は僕に、遊べと云つた!
遊ばうと僕は思つた。――しかしさう思ふことは僕にとつて、
旣に餘りに社會を離れることを意味してゐるのであつた。
かくて僕は野原にゐることもやめるのであつたが、
又、人の所にもゐなかつた……僕は書齋にゐた。
そしてくされる限りにくさつてゐた、そしてそれをどうすることも出来なかつた。
(一九三五・二)
中原中也 1907-1937 未刊詩篇
出典:中原中也全詩集 P.762 1972 角川書店
注)屡々 = しばしば
注)亦 = また
注)屡々 = しばしば
注)亦 = また
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