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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-05-30

H・ハイネ「ロマンツェロ」跋文 抄訳


片山敏彦 訳 "ハイネ詩集" 序文より




ロマンツェロ - 跋文 抄訳


僕は幸福の時期に崇拜した
さまざまの偶像に別れを告げるための
最後の外出をした。
僕は無理矢理にわが身を
ルーヴルの美術館まで曳きずつて行つた。

そして臺座の上に立つてゐる大理石の
なつかしい女神さま、ミロのヴィーナスの前へ來たときに
僕は殆んどくづ折れた。
僕は泣いた。激しく泣いた。
石像さへも、きつと僕を憐れんだほどに。

ミロの女神さまも気の毒さうに
僕を見下ろしてゐなさったが、
詮ないことに、かうおつしやるかのやうだつた。
「ね、わたしは腕を失くしたのだよ、
助けて上げたくてもできないのだよ。」



 これは誰の詩だらうか? アポリネール派の現代詩人だらうか? 違う。
これはハイネの詩集「ロマンツェロ」の跋文である散文の一節を、詩の
形にして幾らか自由に私が書き直してみたので在る。
                           譯  者


 Heinrich Heine 1851 "Romanzero"(跋文抄訳)
  片山敏彦 訳 1938 ハイネ詩集 序文 新潮社 



出典:片山敏彦 訳 1951 ハイネ詩集 新潮社

注)跋文 = ばつぶん 書物の後書き
注)詮ない = せんない 報いられない しかたがない
注)出典は段落なし, ここではより詩の形らしく3連とした

改訂:2019.10.14 レイアウト更新



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