曇つた秋
2
猫が鳴いてゐた、みんなが寝静まると、
隣りの空地で、そこの暗がりで、
まことに緊密でゆつたりと細い声で、
ゆつたりと細い声で闇の中で鳴いてゐた。
あのやうにゆつたりと今宵一夜を
鳴いて明あかさうといふのであれば
さぞや緊密な心を抱いて
猫は生存してゐるのであらう……
あのやうに悲しげに憧れに充ちて
今宵ああして鳴いてゐるのであれば
なんだか私の生きてゐるといふことも
まんざら無意味ではなささうに思へる……
猫は空地の雑草の蔭で、
多分は石ころを足に感じ
その冷たさを足に感じ、
霧の降る夜を鳴いてゐた――
2
猫が鳴いてゐた、みんなが寝静まると、
隣りの空地で、そこの暗がりで、
まことに緊密でゆつたりと細い声で、
ゆつたりと細い声で闇の中で鳴いてゐた。
あのやうにゆつたりと今宵一夜を
鳴いて明あかさうといふのであれば
さぞや緊密な心を抱いて
猫は生存してゐるのであらう……
あのやうに悲しげに憧れに充ちて
今宵ああして鳴いてゐるのであれば
なんだか私の生きてゐるといふことも
まんざら無意味ではなささうに思へる……
猫は空地の雑草の蔭で、
多分は石ころを足に感じ
その冷たさを足に感じ、
霧の降る夜を鳴いてゐた――
(一九三五・一〇・五)
中原中也 1933年-1936「草稿詩篇」より
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