Click Icon or Scroll up

Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2016-10-11

中原中也「修羅街輓歌 IIII」


中原中也「山羊の歌」より




修羅街輓歌

関口隆克に


      IIII


いといと淡き今日の日は
雨 蕭々しょうしょう と降りそそ
水より淡き空気にて
林の香りすなりけり。

げに秋深き今日の日は
石の響きの如くなり。
思い出だにもあらぬがに
まして夢などあるべきか。

まことや我は石のごと
影の如くは生きてきぬ……
呼ばんとするに言葉なく
空の如くははてもなし。

それよかなしきわが心
いわれもなくてこぶしする
誰をか責むることかある?
せつなきことのかぎりなり。


中原中也 1934 「山羊の歌」



出典:中原中也全詩集 P.108 1972 角川書店


注)輓歌 = 挽歌
注)蕭々 = もの寂しく感じられるさま


改定:2018.06.19
題名使用数字を変更し原典と整合 IV → IIII
レイアウト更新 関連記事リンク追記


関連記事:
 「修羅街輓歌 序歌」


0 件のコメント:

コメントを投稿

      ********** 投稿要領 **********
1. [公開] ボタンは記入内容を管理者宛に送信し即公開はしません
 (サイト劣悪仕様により当該文字列変更不能)
2. 非公開希望の場合もその旨記述しこのボタンで送信して下さい
3. 送信された記述内容は管理者の承認を経て原則公開されます
4. 反公序良俗, 政治的偏向過剰, 宣伝, 広告, スパム等は不可
      **********************************