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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2016-10-24

中原中也(秋が来た)


未刊詩篇 より


 
 
 
(秋が来た)



秋が来た。
また公園の竝木路は、
すつかり落葉で蔽はれて、
その上に、わびしい黄色い夕陽は落ちる。

それは泣きやめた女の顔、
ワットマンにかれた淡彩、
裏ッ側は濕つているのに
表面はサラッと乾いて、

細かな砂粒をうつすらと附け
まるであえかな心でも持つてるもののやうに、
遥かの空に、瞳を送る。

僕はしやがんで、石ころを拾つてみたり、
遐くをみたり、その石ころをちよつとつたり、
思い出したみたいにまた口笛を吹いたりもします。


中原中也 未刊詩篇 より



出典:中原中也全詩集 P.794 1972 角川書店


注)竝木路=なみきみち
注)蔽はれて=おおわれて
注)ワットマン:純白厚手の高級画用紙
注)遥か=はるか
注)遐く=とおく


改訂:2018.11.11新旧仮名遣い及びルビ有無を出典と整合 レイアウト更新





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