冷たい夜
冬の夜に
私の心が悲しんでゐる
悲しんでゐる、わけもなく……
心は錆びて、紫色をしてゐる。
丈夫な扉の向ふに、
古い日は放心してゐる。
丘の上では
棉の實が罅裂ける。
此処では薪が燻つてゐる、
その煙は、自分自らを
知つてでもゐるやうにのぼる。
誘はれるでもなく
覓めるでもなく、
私の心が燻る……
私の心が悲しんでゐる
悲しんでゐる、わけもなく……
心は錆びて、紫色をしてゐる。
丈夫な扉の向ふに、
古い日は放心してゐる。
丘の上では
棉の實が罅裂ける。
此処では薪が燻つてゐる、
その煙は、自分自らを
知つてでもゐるやうにのぼる。
誘はれるでもなく
覓めるでもなく、
私の心が燻る……
中原中也 1938 在りし日の歌
出典:中原中也全詩集 P.178 1972 角川書店
注)棉 = わた
注)此処 = ここ
注)燻つて = くすぶって
注)棉 = わた
注)此処 = ここ
注)燻つて = くすぶって
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