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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-12-07

レジーヌ・クレスパン「夢のあとに」


昨日、この同じ曲を Tenebrae Choir のコーラスで掲載して、大変美しい響きを堪能できたのですが…… 聴き込むほどに、フラストレーションが高じてしまいました。



なぜかというと、言葉。
フランス語の歌詞を一生懸命それらしく歌っていて外国語で歌う歌として素晴らしい出来で、美しいハーモニーを存分に楽しめます。
しかし、聴くほどに欲が出て、どうしてもフランス語の歌の響きではないし……
せっかく対訳歌詞を用意して目の前に開いておいても、どの行を歌っているのやら、さっぱり判らず…… あれぇ、こんなはずではなかった。

歌詞の発音がどうであれ、それがハーモニーを損なうわけではないので、ハーモニーが主目的のコーラスとしてはそれでいいのかもしれませんが、私はどうしても、言葉がおろそかになるとだめで、楽しめなくなってしまいます。
それで、他の歌唱を聴きたくなりました。

∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴

前世紀後半に活躍したフランスのソプラノ、レジーヌ・クレスパン (Régine Crespin)。
ドイツオペラやリートのレパートリーが多いようですが、美しいフランス語の発音にも定評があるといわれています。
聴いてみると、なるほどフランス語のお手本のような美しい言葉、こもらず前に出る暖かい声、端正なリートの歌い方、スローな曲なのに揺るがないリズム…… すばらしい。
最後の、"ô nuit mystérieuse!" の滑らかな歌唱は特に印象的です。

夢破れてなお、まどろみの中に意識が遠のくかのように、没する。


∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴


"Après un Rêve"
 夢のあとに


Dans un sommeil que charmait ton image
眠りの中で 魅惑的なあなたの面影を

Je rêvais le bonheur, ardent mirage
夢に見た 幸せを、燃える幻想を

Tes yeux étaint plus doux, ta voix pure et sonore
あなたの目は優しく 声は清らかに響き

Tu rayonnais comme un ciel éclairé par l'aurore;
夜明けの煌めきのように 輝いていた;


Tu m'appelais et je quittais la terre
あなたが私を呼び  私は大地を離れた

Pour m'enfuir avec toi vers la lumière
あなたと飛び立つために 光に向けて

Les cieux pour nous entr'ouvraient leurs nues
空は私たちを迎えるために 厚い雲を開く

Splendeurs inconnues, lueurs divines entre vues
未知の輝き、視界にさす神々しい光


Hélas! Hélas, triste réveil des songes
あぁ! あぁ、夢からの悲しい目覚め

Je t'appelle,
私は あなたを呼ぶ、

ô nuit, rends moi tes mensonges
おぉ 夜よ、幻影を返せ

Reviens, reviens radieuse
帰れ、帰れ 煌めく光

Reviens, ô nuit mystérieuse!
帰れ、あぁ 夜の神秘!


Romain Bussine (1830-1899) "Apres un reve"より 土のちり 訳

∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴

    Brava !!!!!!!!!!!!

3'12"                                        

Gabriel Fauré "Après un Rêve"
Sop: Régine Crespin
Pf: Unknown


注)昨年、ロストロポーヴィチ演奏「夢のあとに」の記事中に歌詞を日本語のみで掲載しましたが、その訳語の一部に、C&P の手違いでとんでもない訳語が載っているのに昨日気が付き、即訂正しました。
あまりにも酷い誤記で意味も通らないので、気づかれて無視して頂けたこととは思いますが…。
全く個人的な内容のブログでもあり、何の弊害もなくただ記者の恥であるだけとは思いますが、改めてお詫びいたします、m(__)m。

注)この改正した訳においても、またこの歌詞の訳に限らず、文法的には正しくない訳し方をしているところがあります。
歌詞の対訳では、できるだけ原詩の語順と同じように訳語を並べる逐語訳としたい、言い換えれば、歌唱が進むのに応じて訳語を並べて記したいため、日本語の普通の語順を無理に入れ替えたり、ちょっとした文法無視をしたりします。
例えば、"nuit mystérieuse" を順当に「神秘な夜」とせず、「夜の神秘」としてあります。
これは、長く伸ばして消え入るように歌われれて曲が終わる "mystérieuse" の語に対応する訳語「神秘」を末尾に置きたいためです。
この例では、名詞を形容語に、形容詞を名詞に訳してしまっているので、厳密には文法違反ですが、原文は平叙文ではなく、nuit に冠詞が省かれていたりもするので、nuit と mystérieuse が等価に併記されていると解釈して、品詞を無視して歌われる語順通りの訳としました。
とはいえ、素人の翻訳ですから、あれこれと間違いが散見されるかと思います。
おかしい訳に気づかれました際は、人助けと思って、ぜひご指摘ください。Help──────!!!!!!



改訂:2017.12.8 夢見た → 夢に見た
   2017.12.8 帰れ 夜の神秘 → 帰れ、あぁ 夜の神秘! 他句読点等多数改正
   2017.12.8 注釈 訳文説明追記
   2017.12.9 注釈 誤記訂正



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