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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2016-08-25

中原中也 「夕照」


「山羊の歌」より




  夕照



丘々は、胸に手を当て
退けり。
落陽は、慈愛の色の
金のいろ。

原に草、
鄙唄ひなうたうたひ
山に樹々、
老いてつましき心ばせ。

かゝる折しも我ありぬ
小児に踏まれし
貝の肉。

かゝるをりしも剛直の、
さあれゆかしきあきらめよ
みながら歩み去る。


中原中也 1934 山羊の歌



出典:中原中也全詩集 P.556 1972 角川書店


注)鄙唄(ひなうた) = 田舎の素朴な歌。ひなびた歌
注)心ばせ = 心配り。思慮分別。
注)小児に踏まれし貝の肉 = 次元の低い誹謗に傷ついた我が身のことか・・・


改訂:2018.08.28 レイアウト更新



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