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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2016-08-04

中原中也 「失せし希望」


「山羊の歌」より




  失せし希望



暗き空へと消え行きぬ
わが若き日を燃えし希望は。

夏の夜の星の如くは今もなほ
遐きみ空に見え隱る、今もなほ。

暗き空へと消えゆきぬ
わが若き日の夢は希望は。

今はた此處に打伏して
獸の如くは、暗き思ひす。

そが暗き思ひいつの日
晴れんとの知るよしなくて、

溺れたるよるの海より
空の月、望むが如し。

その浪はあまりに深く
その月はあまりに淸く、

あはれわが若き日を燃えし希望の
今ははや暗き空へと消え行きぬ。


中原中也 1934「山羊の歌」



出典:中原中也全詩集 P.72 1972 角川書店


注)遐き = とおき 遠い 遥か
注)今はた = 今はもう 今となっては
注)此處 = ここ
注)獸 = 獣 けもの

参照:岩波 古語辞典 1974 岩波書店(岩波)
   全文全訳 古語辞典 2004 小学館(全文)
   大辞泉 1995 小学館


改訂:2018.09.28 ルビを出典と整合 注釈加筆 レイアウト更新
  :2018.09.30 ルビ書式誤植訂正



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