失せし希望
暗き空へと消え行きぬ
夏の夜の星の如くは今もなほ
暗き空へと消えゆきぬ
今はた此處に打伏して
そが暗き思ひいつの日
溺れたる夜の海より
その浪はあまりに深く
あはれわが若き日を燃えし希望の
わが若き日を燃えし希望は。
夏の夜の星の如くは今もなほ
遐きみ空に見え隱る、今もなほ。
暗き空へと消えゆきぬ
わが若き日の夢は希望は。
今はた此處に打伏して
獸の如くは、暗き思ひす。
そが暗き思ひいつの日
晴れんとの知るよしなくて、
溺れたる夜の海より
空の月、望むが如し。
その浪はあまりに深く
その月はあまりに淸く、
あはれわが若き日を燃えし希望の
今ははや暗き空へと消え行きぬ。
中原中也 1934「山羊の歌」
出典:中原中也全詩集 P.72 1972 角川書店
参照:岩波 古語辞典 1974 岩波書店(岩波)
全文全訳 古語辞典 2004 小学館(全文)
大辞泉 1995 小学館
改訂:2018.09.28 ルビを出典と整合 注釈加筆 レイアウト更新
:2018.09.30 ルビ書式誤植訂正
注)遐き = とおき 遠い 遥か
注)今はた = 今はもう 今となっては
注)此處 = ここ
注)獸 = 獣 けもの
参照:岩波 古語辞典 1974 岩波書店(岩波)
全文全訳 古語辞典 2004 小学館(全文)
大辞泉 1995 小学館
改訂:2018.09.28 ルビを出典と整合 注釈加筆 レイアウト更新
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