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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2016-08-30

J. ゴールウェイ:ヴィヴァルディ 「ラルゴ」


J. ゴールウェイという人、その昔あこがれのベルリン・フィルのフルート奏者に合格したもののカラヤンと相容れず、第一奏者の座を蹴って飛び出したというあっぱれなジョン・ブル。で、のちにエリザベス女王より "Sir" の称号を送られる。なんと麗しい話ではないか。



10 代のころ、家でフルートの練習をしたことがあった。

中学校でブラスバンド部に入ると、ピッコロと、フルートの教則本を渡され、自分で練習しろとのこと。部員にも教師にもピッコロかフルートを吹ける者は一人もいなくて、結局ものにならなかった。
それでもその楽器の魅力はしっかり覚えて、長い間こずかいを貯めてフルートを買った。
しかしこれも、結局は独習するしかなく、満足な音が出せなかった。

ビバルディの合奏協奏曲「四季」の「冬」からその第二楽章「ラルゴ」。

これはフルートにも大変魅力的な曲です。もっとも、バイオリンに代えてフルートで吹くと、季節が「冬」ではなく「春」のようになってしまいますが・・・

この曲は、ラルゴだからスローで指使いも楽、音域も広くないので、入門者でも吹くことができる。
私も、指使いを間違えずに、なんとか終りまで一通り "音を出せる" くらいにはなったが・・・何しろ吹く音の強弱がままならないので、ピーピーッと、うるさいし疲れるし、近所迷惑。
隣家から聞こえてくるピアノの音とはだいぶ様子が違い、私のは騒音だった。
やがて、フルートには適性がない、楽器が安物でこれでは無理、などと悔しまぎれの言い訳をして挫折。フルートはお蔵入りとなった。

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その、ビバルディの「ラルゴ」をジェームス・ゴールウェイの、超人的な演奏で。

超人的・・・最後の、トリルに続く音が延々と13拍続き、最後の拍をフェルマータで更に、ずーーっと、伸ばし・・・聞いている私の息が切れてしまいます。

この曲は、このようにゆったりと演奏すると大変魅力的なのですが、バイオリンと違って、管楽器は息を吹き込み続けないと音が途切れてしまいます。ラルゴだからといってあまり遅いテンポで吹くと、この最後の長音で息が続かなくなります。
そのせいか、プロの演奏者でも曲全体をもっと早いテンポで吹くことが多いようです。

ところで、この最後の音のフェルマータ、バロックのフェルマータ記号は、古典派以降のそれとちがって、曲の終わりの位置を示すだけで、その音を長く伸ばすという指示ではなかったということです。
その意味では、最後の音をこんなに長く伸ばして演奏するのは、ダメということになります。
しかし、ゴールウェイという人は、かなり茶目っ気というか遊び心のある人のようなので、最後のフェルマータは、自らの能力の限界に挑戦して目いっぱい伸ばし、聴衆を驚かしてみたかったのかもしれません。

しかし、何といっても、艶やかに澄んだ音色、滑らかな指使い、絃のピチカートが時を刻んでいるような ゆったりした時間の流れ・・・すばらしい。

A. Vivaldi "The Four Seasons - Winter"
2nd Movement "Largo"
Sir James Galway (fl) & I Solisti di Zagreb



改訂:2021.08.03 レイアウト変更 リード加筆 他末梢変更


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