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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-08-26

中原中也(月の光は音もなし)


「未刊詩篇」より




  (月の光は音もなし)



月の光は音もなし、
蟲の鳴いてる草の上
月の光は溜ります

蟲はなかなか鳴きまする
月ははるかな空にゐて
見てはゐますが聞こゑない。

蟲は下界のためになき、
月は上界照らすなり、
蟲は草にて鳴きまする。

やがて月にも聞えます、
私は蟲の紹介者
月の世界の下僕です。


中原中也 1934 未刊詩篇



出典:中原中也全詩集 P.556 1972 角川書店



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