夏の夜
蟋蟀が鳴く夏の夜の青空のもと、神、仏蘭西の上に星の盃をそそぐ。風は唇に夏の夜の味を傳ふ。銀砂子ひかりし涼しき空の爲、われは盃をあげむとす。
夜の風は盃の冷き縁に似たり。半眼 になりて、口なめずりて飲み干さむかな、石榴の果の汁を吸ふやうに滿天の星の涼しさを。
晝間の暑き日の熱のほてり、未だにきえやらぬ牧の草間に横はり、あゝこの夕のみほさむ、空が漂ふ靑色のこの 大盃 を。
夜の風は盃の冷き縁に似たり。半眼 になりて、口なめずりて飲み干さむかな、石榴の果の汁を吸ふやうに滿天の星の涼しさを。
晝間の暑き日の熱のほてり、未だにきえやらぬ牧の草間に横はり、あゝこの夕のみほさむ、空が漂ふ靑色のこの 大盃 を。
Paul Fort 1902 "La Grande Ivoresse" dans "Paris sentimental"
ポオル・フォオル 1902 「大いなる陶酔 (原題)」- 詩集「感傷のパリ」より:上田 敏 訳
ポオル・フォオル 1902 「大いなる陶酔 (原題)」- 詩集「感傷のパリ」より:上田 敏 訳
出典:上田敏全訳詩集 1962 岩波書店
注)銀砂子=銀箔を粉にしたもの 絵画・蒔絵まきえなどに用いる (大辞林 第三版)
注)横はり=よこたはり → 横たわり
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