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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-04-08

中原中也「閑淑」


中原中也「未刊詩篇」より




閑淑


なんにもおとなうことのない、
私の心は閑寂だ。

    それは日曜日の渡り廊下、
    ――みんなは野原へ行っちゃった。

板は冷たい光澤つやをもち、
小鳥は庭に啼いている。

    締めの足りない水道の、
    蛇口のしずくは、つと光り!

土は薔薇色、空には雲雀
空はきれいな四月です。

    なんにもおとなうことのない、
    私の心は閑寂だ。


中原中也 「在りし日の歌」


出典:中原中也全詩集 P.214 1972 角川書店


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