「訓告処分」ってなに？

「収容のスリランカ人女性死亡 名古屋入管局長ら訓告など処分へ」

　　　　- NHKオンライン見出し 2021.08.06 より

NHK ニュース 2021.08.06 (https://www3.nhk.or.jp/)：
この件を報ずるPCモニター画面を撮った写真

管轄施設内でひとりの人を病で苦しませ衰弱させた末に命を失わせたことの責任が問われているのだから、厳重な処分がアタリキ！
しかし、厳重注意って、字面だけ重くて実態はいかにも軽そうなんだけど…。
訓告処分って…停職、謹慎、降格とか減給とか…どんな罰則規定なのか？　
それにしても、四人だけ？


ではまず、"訓告" と "厳重注意" それぞれの "処分" とはどのようなものか？

人事院「義務違反防止ハンドブック」より：

「訓告、厳重注意等 各府省においては、内規により訓告、厳重注意、注意等が行われている例があります。これらは国公法に基づく懲戒処分ではなく、職員が職務上の義務に違反した場合において、上級監督者としての部下職員に対する指導、監督上の措置として行われるものです。」

以下の二点が明らかになりました。

1：訓告及び厳重注意は、国公法に定められ罰則規定の伴う "懲戒処分" (四種類) ではない
2：これらは、上級監督者としての部下職員に対する "指導"、監督上の "措置" として行われる

この出入国在留管理庁の発表は、”指導” あるいは "措置" に過ぎないものを、"処分" の用語の意図的と思われる誤用により、行政庁の行う懲戒処分を行うかのように見せかけているものと思われます。


次に、訓告あるいは厳重注意という指導または処置が対象とする行為とは?
これについての規定は見つからず, 一つ上位の "戒告" の懲戒処分を引きます. 訓告はこれ未満だということです.

人事院「懲戒処分の指針について」より

1. 正当な理由なく１０日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする
2. 勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする

なんと、訓告より重い戒告が対象とする職務上義務違反は遅刻や欠勤を繰り返した場合等々、ということです。
人ひとりが亡くなるという事態を引き起こしたことに対する職務上義務違反が、その "戒告" にさえあたらず、さらに軽くて懲戒処分ですらない "訓告" と "厳重注意" という指導または処置にするということです。

この入管の発表を報道するなら、まず「懲戒処分者は無し」のようにすべきではないか。


こんな桁違いの誤魔化しがまかり通るのはどうして？

戒告と訓告、よく似てますね。これに意図的誤用も使って "処分" を付け加えたら……
……戒告処分と訓告処分……
いやはやさすがですね、超高学歴お役人の猿知恵。自分たち役人を処分する規定にはそっくりの隠れ蓑を用意してあるんですね。

それなのにマスコミの頭が本物の猿のようで…… 役人の狙い通り「訓告処分へ」などと書き立てる。罰則を伴わない訓告と厳重注意がみごと訓告処分という懲戒処分を受けるかのように化ける。マスコミがそう喧伝する。 こうして出来上がった総白痴化社会にどう抗することができようか……
NHKのニュースも記事本文で 「局長と当時の次長の2人を訓告処分」としています。 多くの新聞も放送も同様に処分が発表されたと伝えています。新聞も放送も、記者達は "処分" に対するこのような疑問を抱くことすらなく行政庁の配布する印刷物をそのまま記事にするのでしょうか？
そうではありません。知っていながら知らん顔。王様は裸じゃない、と自分に言い聞かせているのでしょう。
それでは、役所に利用されるだけのただの広報係ではないか。
自分の意に反して上の思うままに動くなら、それはイヌではないか。

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私の目に止まった唯一の救いは広島の中国新聞の社説。
（一般用語としての "処分" の語を使っていますが）
以下に部分引用させて頂きます。

１人の命が失われたのに責任の所在も不透明なままだ。処分が出されたが、名古屋入管の佐野豪俊局長と当時の次長への訓告、警備監理官ら２人への厳重注意にとどまった。お手盛り調査の限界を露呈した上、こんな軽い処分では、どれほど身内に甘いのか、あきれるほかない。

中国新聞デジタル 2021/8/12 6:38 社説

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