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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-10-16

中原中也「屠殺所」


草稿詩篇(1925年~)より




屠殺所



屠殺所に、
死んでゆく牛はモーと啼いた。
六月の野の土赫く、
地平に雲が浮いてゐた。

道は躓きさうにわるく、
私はその頃胃を病んでゐた。

屠殺所に、
死んでゆく牛はモーと啼いた。
六月の野の土赫く、
地平に雲が浮いてゐた。



中原中也 1925~ 草稿詩篇



出典:中原中也全詩集 P.412 1972 角川書店


注)啼いた=ないた 鳴いた
注)赧く=あかく 物が赤く見えるさま
注)躓きさうに=つまづきそうに


改訂:2018.10.16 注釈文仮名遣い訂正 つまずきそうに→つまづきそうに



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