Click Icon or Scroll up

Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-10-01

中原中也「カフェーにて」


中原中也 未刊詩篇より




カフェーにて



醉客の、さわがしさのなか、
ギタアルのレコード鳴つて、
今晩も、わたしはここで、
ちびちびと、飮み更かします

人々は、挨拶交はし、
杯の、やりとりをして、
秋寄する、この宵をしも、
これはまあ、きらびやかなことです

わたくしは、しよんぼりとして、
自然よりよいものは、さらにもないと、
悟りすましてひえびえと

ギタアルきいて、身も世もあらぬ思いして
酒啜ります、その酒に、秋風沁みて
それはもう結構なさびしさでございました


中原中也 未刊詩篇



出典:中原中也全詩集 P.484 1972 角川書店


注)ギタアル= Guitare(仏) ギター
注)啜り=すすり
注)沁みて=しみて


改訂:2018.11.28 誤字訂正 未完→未刊



0 件のコメント:

コメントを投稿

      ********** 投稿要領 **********
1. [公開] ボタンは記入内容を管理者宛に送信し即公開はしません
 (サイト劣悪仕様により当該文字列変更不能)
2. 非公開希望の場合もその旨記述しこのボタンで送信して下さい
3. 送信された記述内容は管理者の承認を経て原則公開されます
4. 反公序良俗, 政治的偏向過剰, 宣伝, 広告, スパム等は不可
      **********************************