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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-10-28

中原中也(秋の夜に)


中原中也 未刊詩篇より




(秋の夜に)



僕は僕が破裂する夢を見て目が醒めた。

人類の背後には、はや暗雲が密集してゐる
多くの人はまだそのことに気が付かぬ

気が付いた所で、格別別様のことが出来だすわけではないのだが、
気が付かれたら、諸君ももつと病的になられるであらう。

デカダン、サンボリスム、キュビスム、未来派、
表現派、ダダイスム、スュルレアリスム、共同製作……

世界は、呻き、躊躇し、萎み、
牛肉のやうな色をしてゐる。

然るに、今病的である者こそは、
現実を知つているやうに私には思える。

健全とははや出来たての銅鑼どら
なんとも淋しい秋の夜です。


中原中也 1934 未刊詩篇



出典:中原中也全詩集 P.514 1972 角川書店



注)はや出来たての銅鑼=鋳型で簡単に作れ単純な音で鳴るだけの楽器を 人の安直愚鈍に譬えた

改訂:2018.11.28 誤字訂正 未完→未刊



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