Click Icon or Scroll

Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2025-03-08

立原道造:林空(はやしぞら)


エチュードより





林空はやしぞら

      ゆふすげの花はせつない眼ばたきのやうに
                      ーー丸山薫

せつない眼ばたきといはれた花を、その黄いろな一輪をともしたくさむらの青空に、僕はたたずんで聞く。梢を移る鳥たちの声を、風に似た汽車のとほい笛を。……ああ、明るい昼間。埃のする冬の日向ひなたに、もう一度聞く。それらの物音から気位高く。見馴れないものたちはすぐに立ち去り、あの黄色な一輪を手に持つたまま。僕はもう一度聞く。……ふとかすめた栗鼠りすのかげり。そのまま過ぎた日日のうたを。



立原道造 1914-1939 エチュードより


出典:立原道造詩集 1988 岩波書店


注)ゆふすげ = ユウスゲ(夕菅)花が夕方開き翌日の午前中にしぼむ. 和名は葉がスゲに似ていることに由来する. 別名,キスゲ (-wikipedia より抄訳引用)






0 件のコメント:

コメントを投稿

      ********** 投稿要領 **********
1. [公開] ボタンは記入内容を管理者宛に送信し即公開はしません
 (サイト劣悪仕様により当該文字列変更不能)
2. 非公開希望の場合もその旨記述しこのボタンで送信して下さい
3. 送信された記述内容は管理者の承認を経て原則公開されます
4. 反公序良俗, 政治的偏向過剰, 宣伝, 広告, スパム等は不可
      **********************************