
林空
ゆふすげの花はせつない眼ばたきのやうに
ーー丸山薫
せつない眼ばたきといはれた花を、その黄いろな一輪をともした叢の青空に、僕はたたずんで聞く。梢を移る鳥たちの声を、風に似た汽車のとほい笛を。……ああ、明るい昼間。埃のする冬の日向に、もう一度聞く。それらの物音から気位高く。見馴れないものたちはすぐに立ち去り、あの黄色な一輪を手に持つたまま。僕はもう一度聞く。……ふと掠めた栗鼠のかげり。そのまま過ぎた日日のうたを。
ーー丸山薫
せつない眼ばたきといはれた花を、その黄いろな一輪をともした叢の青空に、僕はたたずんで聞く。梢を移る鳥たちの声を、風に似た汽車のとほい笛を。……ああ、明るい昼間。埃のする冬の日向に、もう一度聞く。それらの物音から気位高く。見馴れないものたちはすぐに立ち去り、あの黄色な一輪を手に持つたまま。僕はもう一度聞く。……ふと掠めた栗鼠のかげり。そのまま過ぎた日日のうたを。
立原道造 1914-1939 エチュードより
出典:立原道造詩集 1988 岩波書店
注)ゆふすげ = ユウスゲ(夕菅)花が夕方開き翌日の午前中にしぼむ. 和名は葉がスゲに似ていることに由来する. 別名,キスゲ (-wikipedia より抄訳引用)
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