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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-05-09

中原中也「村の時計」


在りし日の歌より




村の時計




村の大きな時計は、
ひねもす動いてゐた

その字板のペンキは
もう艶が消えてゐた

近寄つてみると、
小さなひびが澤山にあるのだつた

それで夕陽が當ってさへが、
おとなしい色をしてゐた

時を打つ前には、
ぜいぜいと鳴つた

字板が鳴るのか中の機械が鳴るのか
僕にも誰にも分らなかつた



中原中也 1907-1937「在りし日の歌」より


出典:中原中也全詩集 P.264 1972 角川書店

注)字板=じいた 文字盤


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