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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-05-13

R.M. リルケ「聖なるものと私の呼ぶ」


「最初の詩集」より




聖なるものと私の呼ぶ



聖なるものと私の呼ぶ 一つの追憶が
わたしの心の 一番深い底に照る、
神々の像の 大理石の白さが
聖なる林の仄昏ほのぐらい中に輝くように。

その往時かみの 浄福の思い出、
逝きし あの五月の思い出、───
白い両手に捧げられている香煙、
そのそばを 静かなるわが日々にちにちの生活が通過する……




Rainer Maria Rilke 1896-1898
"Ein Erinnern, das ich heilig heisse" aus Die Frühen Gedichte
ライナー・マリア・リルケ 1896-1898
「聖なるものと私の呼ぶ」最初の詩集 より:片山敏彦 訳




出典:リルケ詩集 片山敏彦 訳 1962 みすず書房

注)かみ(ルビ)=【古語】上 時の流れの上流=昔
注)浄福=清らかな幸福 特に信仰によって得られる幸福

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