山 の 聲
山のはざまを騎士が行く、
陰気に静かな馬の足音。
「俺は今、戀しい人の腕へ行くのか?
それとも暗い墓へ行くのか?」
山の聲がそれに應へる───
「暗い墓へさ。」
騎士はそのまま進んでいくが
重い吐息ついて言ふ。───
「早や俺は暗い墓へ行くといふのか───
それも宜からう。墓の中には憩ひがある!」
山の聲がそれに答へる───
「墓の中には憩ひがあるさ。」
憩ひに充ちた騎士の頬には
一しずくの涙が落ちた。
「俺のために憩ひがあるのは墓穴だけか!
それなら墓も悪くはなからう。」
山の聲が空ろに答へる───
「さうさ、墓もわるくはないさ。」
陰気に静かな馬の足音。
「俺は今、戀しい人の腕へ行くのか?
それとも暗い墓へ行くのか?」
山の聲がそれに應へる───
「暗い墓へさ。」
騎士はそのまま進んでいくが
重い吐息ついて言ふ。───
「早や俺は暗い墓へ行くといふのか───
それも宜からう。墓の中には憩ひがある!」
山の聲がそれに答へる───
「墓の中には憩ひがあるさ。」
憩ひに充ちた騎士の頬には
一しずくの涙が落ちた。
「俺のために憩ひがあるのは墓穴だけか!
それなら墓も悪くはなからう。」
山の聲が空ろに答へる───
「さうさ、墓もわるくはないさ。」
Heinrich Heine 1827 Die Bergstimme aus Buch der Lieder
ハインリッヒ・ハイネ「山の聲」:片山敏彦 訳
ハインリッヒ・ハイネ「山の聲」:片山敏彦 訳
出典:新譯 ハイネ詩集 片山敏彦 訳 1938 新潮社
注)聲=声
注)宜からう=良かろう
注)宜からう=良かろう
0 件のコメント:
コメントを投稿
********** 投稿要領 **********
1. [公開] ボタンは記入内容を管理者宛に送信し即公開はしません
(サイト劣悪仕様により当該文字列変更不能)
2. 非公開希望の場合もその旨記述しこのボタンで送信して下さい
3. 送信された記述内容は管理者の承認を経て原則公開されます
4. 反公序良俗, 政治的偏向過剰, 宣伝, 広告, スパム等は不可
**********************************