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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-05-07

ダニューブ川のさざなみ


既視感 ‐ 初めて見る 情景・景色・事物 を、既に見たように思うこと。
聴覚にもそれがある…「アーニーローリー」「アルルの女」「ダニューブ川の漣」。



いづれも、物心つく前に 78 回転 SP レコードを蓄音機(死語?)で再生したものを聴いたのだろうと思います。
他にもレコードはいろいろあって覚えている曲はいくつもあるのですが、レコードの記憶と関係のない既聴感という感じがするのはこの3曲だけです。

特に、「ダニューブ川のさざなみ」には、こうでなくてはというこだわりがあって、今日聴くことのできる演奏の中で強い既聴感があるのは、間違いなくオーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏のもの。

ところでその "既聴感" とは、どんな感覚? といわれても曰く言い難しですが、首の後ろをつままれた猫のよう、あるいは、催眠術でもかけられたかのように、ふっと思考が鈍るような夢心地のような感じが……うまく言えてませんが。

一人居間にいてこの曲を聴くと、タイムスリップして、どうしても自分の生涯を振り返ってしまいます。
人生、ほんのまばたき、一瞬の夢…… "邯鄲かんたんの枕" を思い出しました。

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中国の小説「枕中記ちんちゅうき」より "邯鄲かんたんの枕":

ちょうの時代に「盧生」という若者が人生の目標も定まらぬまま故郷を離れ、趙の都の邯鄲かんたんに赴く。
盧生はそこで呂翁という道士(日本でいう仙人)に出会い、僅かな田畑を持つだけの自らの身の不平を延々と語った。
するとその道士は夢が叶うという枕を盧生に授ける。

そして盧生がその枕を使ってみると、みるみる出世し嫁も貰い、時には冤罪で投獄され、名声を求めたことを後悔して自殺しようとしたり、運よく処罰を免れたり、冤罪が晴らされ信義を取り戻ししたりしながら栄旺栄華を極め、国王にも就き賢臣の誉れを恣にするに至る。
子や孫にも恵まれ、幸福な生活を送った。しかし年齢には勝てず、多くの人々に惜しまれながら眠るように死んだ。
・・・・・・
ふと目覚めると、時は最初に呂翁という道士に出会った当日であり、寝る前に火に掛けた粟粥がまだ煮上がってさえいなかった。全ては夢であり束の間の出来事であったのである。 盧生は枕元に居た呂翁に「人生の栄枯盛衰全てを見ました。先生は私の欲を払ってくださった」と丁寧に礼を言い、故郷へ帰って行った。
 -ja.wikipekia.org

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ここでは、「ダニューブ川の漣」のビデオクリップを。
作曲は、ルーマニアのヨハン・シュトラウスと呼ばれるイオン・イワノヴィッチ (Ion Ivanovici)。生涯に350曲のワルツを作曲したといわれます。「現在、演奏されたり録音で聴かれたりするのはこの一曲のみである」とか、「これともう一曲(Carmen Sylva)の2曲だけ(ja.Wikipedia)」などと書くサイトがあるが、それは事実に基づかない誹謗。己の無知を恥ずべし。
演奏は、ルーマニアとはダニューブ川を挟んでそれを長い国境として隣りあうハンガリーの、ブタペスト・シュトラウス合奏団。管楽器主体の合奏団で、フルオーケストラとは一味違う色彩豊かな音が魅力です。
(既聴感のあるオーマンディ盤は音質が優れないための代替え)

ビデオが映し出す絵は、贅沢三昧、遊びに明け暮れる、上流階級の退廃的な生活…… 貴族一人につきいったい何人の農奴の人権が奪われてきたのか……。
しかしそれでもなお、貴族であれ農奴であれ、一つの命が終わるとき、それらは皆、等しく尊く、等しく虚しい。
しかし、そんな貴族階級の贅沢三昧は、副産物として、平民の芸術家達による、数々のすぐれた音楽と絵画の作品を生んだ。(ビデオの映す絵は、玉石混交)。
「富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」(ルカ 18:25 口語訳新約聖書)

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Bravo !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

5'30"
"The Waves of the Danube"
Comp: Ion Ivanovici (1845-1902)
Cond: István Borár
Orch: Budapest Strauss Ensemble


注)趙=ちょう 戦国時代に存在した国(B.C.403-B.C.228)
注)恣にする=しにする 思いのままにする
注)栄旺栄華="栄旺" の意味不明 何でしょう?(土のちり)
注)国王にも就き=盧生は王位に就いたことがなくそれに仕えたのみであったので、国王にも "付き" の誤記か(土のちり)

改訂:2021.07.06 記事タイトル不備修正, 他
2024.04.26 末梢表現変更


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