小 景
河の水は濁つて
夕陽を映して銹色をしてゐる。
荷足はしづゝゞとやつて來る。
竿さしてやつて來る。
その船頭の足の皮は、
乾いた舟板の上を往つたり來たりする。
荷足はしづしづ下つてゆく。
竿さして下つてゆく。
船頭は時偶一寸よそ見して、
竿さすことは忘れない。
船頭は竿さしてゆく。
船頭は、夕焼の空さして下る。
中原中也 1907-1937 未刊詩篇
出典:中原中也全詩集 P.614 1972 角川書店
注)銹色=さびいろ
注)荷足=にたり 河川や港湾で荷を運ぶ小型和舟
注)時寓=ときたま
注)一寸=ちょっと
注)銹色=さびいろ
注)荷足=にたり 河川や港湾で荷を運ぶ小型和舟
注)時寓=ときたま
注)一寸=ちょっと
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