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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

改訂情報:


- 二人乗り自転車の歌 重要: たくさん分かち合う→運命を共有する (韻に託けて文法無視で意訳した前訳を改訂)

- ホセ・カレーラス「光さす窓辺」 対訳付き原語歌詞追記

2018-06-02

ポール・フォール「小歌」


Paul Fort, 19世紀末~20世紀中葉 フランスの詩人。 幅広い活躍で近代仏文学の興隆にあずかって力あった(出典解題)。




小 歌



 木立生ひ繁るをかは、岸までりて、静かな水の中へつづく。薄暗うすぐらい水のなかば緑葉りょくえふ を、まつさをなまたのなかば中空なかぞらの雲をゆすぶる。

 ここを通るは白雲しらくも真珠船しんじゅぶね、ついそのさきを滑りゆく水枝みずえいかだ……それ、眼のしたせきの波、渦巻くもやのそのなかに、舟もいかだもあらばこそ。
 
 われらが夢の姿かな。船は砕け、筏は崩れ、帆はあれど、めあてなく、波のまにまに、影の夢、青い夢、せきけ、波に散り、あともない。

 木立生い繁る阜は岸までつづく。むかひの岸の野原には今一面の花ざかり、中空なかぞらの雲一ぱいに白い光が掠めゆく……ああ、またべつの影が来て、うつるかと見て消えるのか。



     ポオル・フォオル



Paul Fort 1898 "Image de mes Rêves" dans "Montagne, Forêt, Plaine, Mer"
ポール・フォール 1898『小 歌』-「山、森林、平野、海」より:上田 敏 訳





出典:上田敏全訳詩集 1962 岩波書店

注)阜=おか 小高いところ 丘
注)水の半ば=水面の半分
注)またの半ば=もう一方の半分
注)中空=なかぞら 空の中ほど 中天 高く(真上に近く)もなく低く(地平線に近く)もなく
注)水枝 = 瑞枝 みずみずしい若枝
注)堰 = せき 河川の水位調節用の構造物 人工の滝の形態をなす
注)掠めゆく=かすめゆく すれすれに通ってゆく


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